建築巡礼
目次
-
楽園に咲く花
ふれあいプラザ なのはな館(1998年)
薩摩半島の先端にある、砂蒸し風呂で有名な鹿児島県指宿市。そこに1998年完成したふれあいプラザなのはな館は、高齢者の生きがいづくりや地域活動のリーダーを育てることを目的として設けられた、高齢者交流センターだ。
-
解放するグリッド
埼玉県立大学(1999年)
埼玉県立大学は、保健、医療、福祉に関する教育・研究を行う公立の大学である。所在地は、埼玉県東部の越谷市で、住宅地と農地が接する境目に位置している。敷地には、本部棟、北棟、南棟、共通施設棟、情報センター、体育館などの建物がコンパクトに配置され、キャンパスを構成している。
-
デジャヴの門
テレコムセンタービル(1996年)
東京臨海副都心の青海地区に立つ、門形の建物がテレコムセンタービルだ。上部をつないだ屋上部は、衛星通信のアンテナを置くスペースとして設けられたもので、テレビがアナログ放送だった頃は、ここから離島に向けて放送電波を発信していた。
-
四角いアメーバ
熊野古道なかへち美術館(1997年)
熊野三山を参詣する経路として、平安時代から栄えたのが熊野古道だ。2004年にはユネスコの世界文化遺産にも登録され、その重要性は近年、再び広く認められている。
-
駅の情景を取り込む
京都駅ビル(1997年)
日本を代表する歴史都市であり、世界中から人々が訪れる観光都市でもある京都の玄関口となる建築である。平安建都1200年の記念事業の1つとして計画され、設計案を決めるに当たっては、国際指名コンペが行われた。安藤忠雄、池原義郎、黒川紀章、ジェイムズ・スターリング、バーナード・チュミ、ペーター・ブスマンと…
-
都市の山に登る
アクロス福岡(1995年)
福岡市の中心部では、「天神ビッグバン」と呼ばれる大規模な再開発が進んでいる。その一画にある複合機能施設がアクロス福岡だ。
-
自由へと逃れる道
潟博物館(水の駅「ビュー福島潟」)(1997年)
潟とは、砂丘の形成により海から切り離されてできた湖沼のことを指す。これが新潟県内には数多く存在しているが、そのなかで最大の広さを誇るのが、新潟市北区に位置する福島潟だ。今回、取り上げる潟博物館は、これに隣接して立っている。正式な名称は、水の駅「ビュー福島潟」である。
-
ニッポンのザラザラ派
浜松市秋野不矩美術館(1997年)
米国メジャーリーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が、打者と投手の二刀流で大活躍し、人気をさらっている。建築界の二刀流といえば、建築史家であり、建築家でもある藤森照信だろう。
-
地獄を巡って天国へ
まんだら遊苑(1995年)
富山県の立山からケーブルカー、バス、ロープウエーなどを乗り継ぎ、黒部ダムを通って長野県側へと抜ける立山黒部アルペンルート。その起点となる立山駅の少し手前に、立山の信仰や自然について解説する立山博物館がある。その建物は磯崎新の設計により、1991年に開館した。これに次いで、博物館の2期工事として近く…
-
サイバー建築の種子
山梨フルーツミュージアム(現・山梨県笛吹川フルーツ公園)(1995年)
山梨県は果物の栽培が盛んで、ブドウやモモなどは全国で生産量日本一を誇る。フルーツ王国とも呼ばれるこの県の中央、山梨市の丘陵地に1995年、山梨フルーツミュージアムはオープンした。エリア全体が公園として整備されており、その中に3つの主要建物がある。
-
建築を生み出す神
奈義町現代美術館/奈義町立図書館(1994年)
岡山県奈義町は中国山地の懐に位置する人口約6000人ほどの小さな町だ。岡山市中心部からこの美術館へは、鉄道とバスを乗り継いで2時間半くらいはかかる。交通の便がいいとはとても言えない。そんなところに現代美術館を建てて、果たして人が来るのか。そんな心配をした向きも少なくなかっただろう。
-
見る/見られるの反転
亀老山展望台(1994年)
瀬戸内海の島々を橋で結んで、愛媛県の今治市から広島県の尾道市へと至るしまなみ海道。その途中、今治から来島海峡を渡ってすぐの所にあるのが大島だ。かつては村上水軍の本拠地もあったというこの島の南部に、標高307mの亀老山(きろうさん)がある。その頂上に展望台は建設された。
-
額縁としての建築
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・図書館(1991年)
谷口吉生は美術館設計の名手として知られる。独立して間もない頃に設計した資生堂アートハウス(1978年)に始まり、以後、手掛けた美術館は十数件に及ぶ。その中でベストはどれか。建築好きが集まればよく議論になるが、その際に豊田市美術館(95年)と並んでしばしば挙がるのが、この丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で…
-
第5のエレベーション
R-90 竹中技術研究所(1993年)
千葉県の北西部に開発された千葉ニュータウンは、1970年代末から入居が始まり、現在は2000ヘクタール弱の面積に人口10万人以上が暮らす街に成長している。その中で商業施設や業務施設が集まっているのが、千葉ニュータウン中央駅の周辺で、その一画にこの建物はある。
-
知識を円の形に
水戸市立西部図書館(1992年)
水戸市の中心部から離れた、住宅地と水田の境界エリアに位置する市立図書館の分館である。敷地に着くと、まず建物を囲む回廊が目に入る。回廊は上から見ると楕円形で、1周が400mのジョギングコースとしても使用される。内側は芝生の広場になっていて、テニスコートやゲートボール場も設けられている。
-
木造サイボーグ
山口蓬春記念館(1991年)
三浦半島の西側に位置する葉山は、相模湾に面した温暖な別荘地として早くから開けた場所。御用邸を中心に皇族も多く別荘を構えた。ちなみに高松宮別邸の跡地は、現在、神奈川県立近代美術館葉山館となっている。その美術館のすぐ近く、小高い山へ続く坂道を少し上がった場所に、山口蓬春記念館はある。
-
群れ立つ塔
浦添市美術館(1989年)
沖縄本島、那覇市の北に隣接する浦添(うらそえ)市は、琉球王朝の発祥の地でもある。この古都に、県内初の公立美術館として、1990年にオープンしたのが、浦添市美術館である。沖縄を代表する伝統工芸品の琉球漆器を収集展示している。
-
過去を未来につなぐ建築
海の博物館(1989年・1992年)
海の博物館は、漁網や漁船といった漁労に関する資料を収集し、展示するミュージアムだ。地元の漁業振興に尽くした民間人が、私財を投じて始めたもので、1971年に開館した時点では鳥羽駅の近くにあった。
-
和風との最後の戦い
強羅花壇(1989年)
訪れるとまず目の前に現れるのは、旧閑院宮別邸だ。1930年に建てられたチューダー様式の建物は、現在、懐石料理を楽しむレストランとして使われている。89年に建て替えられた旅館「強羅花壇」は、その向こうに位置する。しかし、奥の崖地に下から建てられているため、そのボリュームはほとんど見えない。
-
情報化都市に潜む霊
アークヒルズ(1986年)
バブル経済期以降のブームに先駆けて、東京の都心部で実現した代表的な都市再開発がアークヒルズである。