沖縄本島、那覇市の北に隣接する浦添(うらそえ)市は、琉球王朝の発祥の地でもある。この古都に、県内初の公立美術館として、1990年にオープンしたのが、浦添市美術館である。沖縄を代表する伝統工芸品の琉球漆器を収集展示している。
敷地は文化施設や運動施設が集積する公園エリアの一角で、起伏がある丘の上に位置している。琉球石灰岩が敷かれた小道を進んでいくと、回廊に沿って建物に囲まれた街路のような空間へと出る。展望台となっている塔を目指して進み、左に向きを変えると、美術館の入り口だ。
エントランスホールは、ドーム天井の吹き抜け空間で、階段を上がると2階は図書コーナーになっている。1階の廊下を進んでいくと、まずは企画展示のゾーンがある。展示室に囲まれたラウンジ部も含めて、ここには5つのドーム天井が架かる。その奥には常設展示のゾーンがあり、こちらにも4つの展示室にそれぞれドームの天井が載っている。これらのドーム天井を外から見ると、上に突き出た塔のようである。
この建物には、エントランスホールや展望台の塔と合わせると11本の塔が立ち、これを回廊でつないだ格好になっている。群れ立つ塔の情景は、中世ヨーロッパの都市をもほうふつとさせる。
塔は、ストックホルム市庁舎(設計:ラグナル・エストベリ、1923年)など、20世紀初頭のナショナル・ロマンティシズムと呼ばれる北欧の建築では好まれたものの、その後に主流となるバウハウス系のモダニズムでは、使われなくなったモチーフだ。それがなぜ、ここでは復活したのだろうか。