水戸市の中心部から離れた、住宅地と水田の境界エリアに位置する市立図書館の分館である。敷地に着くと、まず建物を囲む回廊が目に入る。回廊は上から見ると楕円形で、1周が400mのジョギングコースとしても使用される。内側は芝生の広場になっていて、テニスコートやゲートボール場も設けられている。
駐車場は回廊の外側にあって、建物裏側の出入り口と接続している。この種の公共施設では、せっかくの建築を周りに止められた自動車が隠してしまい、台無しになっていることも少なくないが、ここではそれが巧みに避けられていた。
玄関は、左右対称の建物の中央にあり、そこから中へ入る。奥へと進んでいくと、円形平面の一般開架室に出た。同心円状に書棚が配され、2階の壁面もぐるりと書棚が囲んでいる。本に包み込まれたような印象だ。
天井にはドーム屋根が架かる。これを施工するには、鉄筋格子シェルの構法を採用して、仮設なしでコンクリートの架構を実現した。ドームの形状をつくり上げた格子が仕上げとしても現れており、空間の表現にも効いている。
一般開架室の周りは通路状の展示ギャラリーが一周する。見通しが利かず、方向感覚も失われるが、迷宮の中を歩いているような、わくわくする感じもある。
その外側に児童開架室、新聞・雑誌コーナー、視聴覚室、会議室などが、花びらのように放射状に延びる。それぞれの部屋は、外から見ると切妻屋根の家型を採っている。
竣工して30年になるが、建物はきれいなままに使われている。利用者も多く、訪れた際には子どもからお年寄りまで、幅広い年齢層が、1階のベンチや2階回廊の読書コーナーなど、それぞれのお気に入りの場所で本を開いていた。そして外では、人々がジョギングやテニスで汗を流す姿が見られる。