ポストモダニズムの建築
正円、楕円、左右対称、放射状といった明快な幾何学平面と、ドームや家型といった象徴性の強い形態は、ポストモダニズムの建築に見られる傾向だ。この種のデザインは、1990年代初めにバブル経済が崩壊して以降、急速に廃れていくので、この建築は日本ポストモダニズムの最後を飾る作品と言ってよいかもしれない。
設計者の新居千秋は米国の建築家、ルイス・カーンの下で働いていたことがあり、その影響も随所にうかがうことができる。円形の大空間を独立した形態を持つ諸室が取り囲む構成や、ドーム屋根の外に立つスリット壁の二重皮膜は、バングラデシュ国会議事堂(竣工:1983年、設計:ルイス・カーン)にも見られるものだ。師匠直伝の設計手法と言える。
新居はまた、設計に当たって歴史上の名作とされる図書館建築を参照したことを明かしている(「新建築」1992年8月号)。
そこで挙げられたのは、円形平面を採った大英博物館図書室(1857年、シドニー・スマーク)をはじめ、ストックホルム市立図書館(1928年、グンナール・アスプルンド)や、ドーム状の空間を抱いたフランス国立図書館(1868年、アンリ・ラブルースト)である。
モダニズムの隆盛以後、図書館建築の平面も、書架の配置や増設を合理的に解決できる四角形が主流となったが、円やドームは地球や宇宙の形であり、これを探求する科学の知を象徴するものである。そう考えて新居は、この図書館の設計で採用したのだという。