陶芸の町として知られる茨城県の笠間市。窯元や展示施設が点在するそのエリアに、「笠間の家」は存在する。元は、陶芸家である里中英人のアトリエ兼住居として1981年に竣工した。里中は陶土にガラスを組み合わせた作品など、前衛的な作風で知られている。
ここを拠点として活動するが、89年に交通事故で急逝。この家には8年しか住まなかった。建物は2012年、笠間市へと寄贈され、現在はギャラリー、カフェとして運営されている。
設計者は伊東豊雄だ。伊東の初期の代表作である「中野本町の家」(1976年)は、「White U」の異名を持っていた。内部が真っ白で、アルファベットの「U」の字を模したような平面を採っていたからである。それを踏まえるなら、「笠間の家」は片仮名の「イ」を鏡像反転させた形と言えばいいだろうか。
2階の中央部に玄関がある。そこを入って、右手の側に直線状のギャラリーが延びる。その奥は書斎だ。左手に進むとかつての居間で、ここでカフェのサービスを行っている。テーブルと椅子は、伊東としばしば協働した家具デザイナー、大橋晃朗による作品だ。
階段を下りると、下階はかつての工房だった部屋で、こちらもワークショップやイベントの会場として借りることができる。