千葉県の北西部に開発された千葉ニュータウンは、1970年代末から入居が始まり、現在は2000ヘクタール弱の面積に人口10万人以上が暮らす街に成長している。その中で商業施設や業務施設が集まっているのが、千葉ニュータウン中央駅の周辺で、その一画にこの建物はある。
竹中技術研究所は、竹中工務店の創立90周年事業として、1993年に竣工した。竣工当時の雑誌記事で使われた「R-90」という建物名称は、そこに由来している。
研究所は管理棟、研究棟、東西南北の各実験棟などから成る。2009年には耐火実験棟が増築され、19年には研究棟に面した中庭を内部化するリニューアル工事も行われた。これにより、異領域の研究者が空間を共有しながら自由に利用できるワークプレイスが実現した。また敷地内には、この地域の生態系を再現した屋外空間「調の森 SHI-RA-BE」も整備されている。
延べ面積で3万9000m2を超える規模の建物であり、その中には構造や耐火の試験を行う巨大な実験棟も含まれている。にもかかわらず、外から見ると、あまり大規模な施設には感じられない。緑の斜面に覆われ、なだらかな丘と一体化したような印象を呈する。
都市計画では高層建築が想定されていたエリアだったが、この建物はあえて低く広がり、大地と一体化する形が選ばれた。竣工時には周りの視界が開けていたが、現在では開発が進み、高い建物に囲まれるようになっている。しかしこの低さこそが、逆に都市の中で建物を際立たせているようにも感じられる。