全2194文字
PR
設計=谷口建築設計研究所 施工=鹿島 構造=SRC造 階数=地下1階・地上3階 竣工=1991年(平成3年) 所在地=香川県丸亀市浜町80-1 交通=JR丸亀駅から徒歩1分
設計=谷口建築設計研究所 施工=鹿島 構造=SRC造 階数=地下1階・地上3階 竣工=1991年(平成3年) 所在地=香川県丸亀市浜町80-1 交通=JR丸亀駅から徒歩1分
[画像のクリックで拡大表示]

 谷口吉生は美術館設計の名手として知られる。独立して間もない頃に設計した資生堂アートハウス(1978年)に始まり、以後、手掛けた美術館は十数件に及ぶ。その中でベストはどれか。建築好きが集まればよく議論になるが、その際に豊田市美術館(95年)と並んでしばしば挙がるのが、この丸亀市猪熊弦一郎現代美術館である。

 猪熊弦一郎(1902~93年)は昭和の時代を代表する画家の1人。建築界との縁も深く、丹下健三が設計した香川県庁舎(58年)のロビーにある巨大な壁画も彼の作品だ。猪熊が少年時代を過ごしたのがこの丸亀市で、晩年に寄贈された2万点の作品を収蔵し展示する施設として、この美術館は設けられた。建物1階には市立図書館も併設されている。

 まずは1階へ。天井が低いエントランスホールから2階へと向かおうとすると、階段の手前でいきなり頭上が開けて、吹き抜けとなる。空間の転換が実に見事だ。

 2階は2つの常設展示室などから成る。特にゆったりとした空間の展示室Bは、ハイサイドライトからの自然光の効果も素晴らしく、うっとりと展示に浸ることができる。

 3階には企画展示室やカフェがある。このフロアには階段状の半屋外空間を介しても上がって来られるようになっている。ここもまたこの建築の見どころだ。

(イラスト:宮沢 洋)
(イラスト:宮沢 洋)
[画像のクリックで拡大表示]