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設計=内藤廣建築設計事務所 施工=鹿島・大西種蔵建設 構造=プレキャストコンクリート造・RC造・木造 階数=地上2階 竣工=収蔵庫1989年(平成元年)・展示棟1992年(平成4年) 所在地=三重県鳥羽市浦村町大吉1731-68 交通=JR・近鉄鳥羽駅からタクシーで約20分
設計=内藤廣建築設計事務所 施工=鹿島・大西種蔵建設 構造=プレキャストコンクリート造・RC造・木造 階数=地上2階 竣工=収蔵庫1989年(平成元年)・展示棟1992年(平成4年) 所在地=三重県鳥羽市浦村町大吉1731-68 交通=JR・近鉄鳥羽駅からタクシーで約20分
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 海の博物館は、漁網や漁船といった漁労に関する資料を収集し、展示するミュージアムだ。地元の漁業振興に尽くした民間人が、私財を投じて始めたもので、1971年に開館した時点では鳥羽駅の近くにあった。

 89年、駅から車でパールロードを20分ほど走った先にある現在の地に収蔵庫が完成。続いて展示棟を建てて92年に全面移転を果たす。その後、体験学習館やカフェテラスを増設し、現状に至っている。2017年からは鳥羽市立海の博物館になったが、運営のやり方は変わっていない。

 2棟の展示棟は、タール塗装が施されたスギ板張りの建物で、焼き杉板を連想させる黒が印象的。そこにあしらわれた朱色の扉も、アクセントとして効いている。一方、3棟の収蔵庫は、白い壁で対比を成すが、屋根はいずれも瓦ぶきだ。

 敷地には高低差があり、一番奥には古墳がこんもりとした丘を形づくっている。広場や池を囲むように複数の建物が集まっている風景は、小さいながら1つの集落のようでもある。

 設計者は内藤廣だ。1970年代の半ば、まだ大学院生だった頃に雑誌『新建築』で月評欄を執筆するなど、早くから建築界で知られる存在となった。しかし、建築家としてのデビューは80年代になってからだ。

 バブル経済へと進んでいく時代のなかで、高松伸、隈研吾、竹山聖ら、同世代の建築家たちが、目を引く建物を次々と発表していくのに対して、内藤による住宅以外の作品は、ギャラリーTOM(竣工84年)があるくらいで、その存在は埋もれていた。建築界では、華やかなポストモダニズムのデザインが真っ盛りだった。

(イラスト:宮沢 洋)
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