2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催まで、あと2年。移動、観戦、宿泊などに関するバリアフリー関連の基準などを見直す動きが活発だ。障害は個人ではなく、社会、環境の側にある、という考え方にシフトしてきた。車椅子使用者、外国人、LGBT……。目指すべきは誰もがストレスを感じずに参加できる社会だ。しかし、特別なニーズへの個別解は、そのほかの人たちのバリアに転じることもある。建築や都市のバリアを解消し、全体的なユニバーサルデザイン化を図るには、設計者の観察力と計画力が欠かせない。

バリアフル建築、利用者の警告
国際化で高まる「NG設計」のハードル
目次
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国際水準で異例の開業前改修
レガシー改修
東京都が2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて整備する新規恒久施設8件で唯一、運用を開始した「武蔵野の森総合スポーツプラザ」。大会対応のため、異例の開業前バリアフリー改修を実施した。
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ルール超えた使いやすさ追及
利用者検証
オリパラ大会に向けて、車椅子使用者に配慮した客室の整備が各地で進む。設計段階から使用者の視点を入れ、さらに使用者による実地調査を行う例もある。見えてきたのは、法令順守だけではかなわない使い勝手だ。
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“ 無自覚バリア”に物申す!
定番NG集
バリアフリーにしたはずの施設ですら、つくり手の無自覚がもたらすバリアが無くならない。5人の車椅子使用者の体験集。「健常者が想像でつくる建物はファンタジー」との声も。
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UD浸透にはビジネスの視点
インタビュー
前項で紹介したコンサルティング会社、ミライロの垣内俊哉代表は車椅子使用者だ。大学時代に同社を設立し、ビジネスとしてユニバーサルデザインを推進する。「単なる社会貢献でなくビジネス視点がないと広がらない」と語る
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待ったなしのムスリム対応
外国人
建築や都市に潜むバリアに悩まされているのは身体障害者だけではない。生活習慣が多様化するなか、これまで見過ごしてきたバリアを理解し、施設計画に反映するためのヒントを探る。
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ブース内に空調機はご法度
分煙
喫煙スペースを設けても、定石をきちんと守らなければたばこの煙やにおいは漏れる。空調・換気設備の設計やドアの選択によっては空気の流れに乱れが生じるからだ。出入り口からの給気の確保が最重要となる。
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男女を問わない個室が有用
LGBT
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)などの性的マイノリティーは、人口の5~8%を占めるといわれる。自治体や企業でも、体の性に応じて機能を分けるだけでは不十分との認識が広がってきた。
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多様性が生む新たな市場
利用者にとって快適な建築、駅、都市をつくったはずでも、想定しなかったバリアを訴える人が現れる。多様性がもたらすバリアの根絶は簡単ではない。だがそれは「新たな市場」と見ることもできる。