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巨大マーケットを取りに行く

だからこそ、ボランティアなどではなく、株式会社という形でUDを後押していると。

 国内の障害者は約860万人、高齢者は約3500万人いると言われています。この市場を取りに行こうと。車椅子使用者が便利であれば、それはベビーカーで街に出る人、高齢者にとっても、利便性が高いはずです。

 高齢者のニーズは、障害者のニーズを統合した状態といえます。加齢に伴って歩きにくく、聞こえにくく、見えにくくなる。高齢者の場合は、同時進行。つまり、障害者の理解なくして、高齢者の理解はありえないわけです。超高齢化社会を迎える日本において、巨大なマーケットだと思いませんか。

 例えば、ミライロが施設のUD改善提案で携わった霊園があります〔写真1〕。駐車場からの動線を含めて全ての段差を無くし、車椅子使用者が使えるトイレも備えています。売れ行きは好調で、新たなUD霊園のオープンも控えています。車椅子使用者にとって便利にしたことで高齢化にもニーズがあった好例だと思います。

〔写真1〕車椅子使用者・高齢者に使いやすい霊園
〔写真1〕車椅子使用者・高齢者に使いやすい霊園
ミライロが携わった大阪府枚方市の霊園「ハピネスパーク」。事業者は霊園開発を手掛ける西鶴(大阪府交野市)。砂利道や階段、段差などがある霊園が多いなか、ユニバーサルデザインに配慮したことで、人気を集めた。車椅子使用者が利用しやすい水汲み場を、どの墓からも徒歩50歩以内の場所に設置したことも好評だ(写真:ミライロ)
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広々としたトイレも設置した(写真:西鶴)
広々としたトイレも設置した(写真:西鶴)
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あらゆる人を対象にすることの難しさは。

 当然あります。誰もが使いやすいということは、誰かにとっては不便なことが多い。障害を取り除くという概念のバリアフリーであれば、誰かの利便性が犠牲になってもある意味では仕方がないことかもしれません。しかし、UDでは、皆が少しずつ我慢しなくてはいけない。

 では何が最適解か。答えは簡単です。皆に聞けば良いのです。利用者に聞いてこそ分かることがあります。聞かずして分かる人などいない。

 ミライロでは、障害のあるモニター約5000人を有する「ミライロ・リサーチ」というサービスを展開しています。利用者の視点で社会に潜む様々なバリアを調査し、UDに生かすものです。私自身も、こうした調査や具体のプロジェクトを通して、必要な機能や配慮が見えてきました。

 どんな人が利用するか、誰に来てもらいたいか、どうしたら使い勝手が良くなるか──。利用者の声を聞いたうえで、より使いやすい空間をつくる。設計者にしかできないことです。

 新しいものを建てるとき、コンセプトや設計の初期段階で、法令順守のバリアフリーのみならず、そうしたことに知恵を回せば、過剰なコスト無しにUDは実現できる。“正しい中間”の視点を持ってほしいと思います。

UDを定着していくために必要なことは、どんなことですか。

 問題は3つに大別できます。建築を含めた環境のバリア、意識のバリア、そして情報のバリアです。環境については、世界的に見ても、かなり高い水準で対応できている。粗を探そうと思えばいくらでもありますが、限りある国土ながら、できることを確実にやってきた国です。

 だからこそ、意識のバリアについては、改善していく必要がある。環境が整っているのだから、「大丈夫ですよね?」と、無関心な人が多いのです。ハードはもちろん、ハートも変えていくことが重要です。

 情報を発信し、コミュニケーションを取ることも軽視してはいけない。例えば、店舗などで電源が使えるかどうか。実は、電動車椅子の使用者も求めている情報です。パソコンや携帯と同じで、いざというときに充電できる場所は知っておきたいですから。

今後、挑戦したいことは。

 これからは、建築とテクノロジーの融合で、UDを実現できる時代になると感じています。皆がスマホートフォンを持ち、GPSの誤差もほんの少しです。例えば、スマホさえあれば、点字ブロックがなくても、視覚障害者を誘導できる。点字ブロックを開発した日本だからこそ、潔く無くす国にもなり得るのではないか。まだ詳細は言えませんが、そうしたプロダクトの開発にも着手しています。