死者数が平成最悪の被害となった西日本豪雨。気象庁は「平成30年7月豪雨」と命名した。消防庁によると7月27日時点の死者数は14府県で219人。行方不明者は10人に上る。岡山県倉敷市真備町地区では、街の南側を流れる小田川などが氾濫して街の4分の1が水没した。広島県では7400カ所以上で斜面が崩壊。広島市や呉市などで土石流が住宅地を直撃している。これまで“異常”と判断してきた豪雨は、もはや日常と化した。広範囲に及ぶ水の災害から命を守るすべを再考する必要がある。

連載
西日本豪雨の教訓
建築は異常気象に立ち向かえるか
目次
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予見されていた洪水被害
岡山・真備水害
51人が命を落とした岡山県倉敷市真備町の水害。その多くは高齢者だった。高い浸水深が広範囲にわたったことが被害拡大の背景にある。その浸水域は、2016年に市が作成したハザードマップとほぼ重なっていた。
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ダム越えた土石流が直撃
広島土砂災害
西日本豪雨では、土石流などの土砂災害が広範囲で多発。住宅地に甚大な被害が生じた。国土交通省の集計によると7月27日時点で、土砂災害による死者数は118人で平成最悪となった。うち広島県内では86人に上る。
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「猛烈な雨」の被害に備えよ
激甚化する豪雨災害
気候変化によって頻発する豪雨に、インフラが耐えられなくなっている。河川氾濫や土砂災害は発生頻度や災害規模が拡大する傾向にある。土木的な防災のみに頼らず、地域や個人でも水の脅威に備えなければならない。
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避難所で生かす建築の知恵
避難所支援に取り組む建築家に聞く 坂 茂/坂茂建築設計代表
プライバシーは人権において必要最低限の要件だが、避難所にはプライバシーがない。雑魚寝している脇を人が通ったり、広い場所を少ない人数が占有したりと、いざこざも起こりやすい。私たちは被災地の支援活動として紙と布の避難所用・間仕切りシステム(PPS)を開発、被災地に提供してきた。紙管をフレームとして使い…