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 パリの観光名所であるノートルダム寺院で、4月15日午後6時50分ごろ(日本時間16日午前1時50分ごろ)、大規模な火災が発生した。12世紀から建造が始まったゴシック様式を代表する大聖堂は年に約1300万人が訪れる。英BBCによると、エマニュエル・マクロン仏大統領は、「フランスの全国民と同じように、自分たちの一部が燃えているこの光景は悲しい」と述べた。

 この火災により、大聖堂の高さ約90mの尖塔と屋根が焼け落ちた〔写真1〕。一方で、大聖堂の北棟と南棟など主要部分は無事だという。尖塔では修復工事が行われており、周囲には作業用の足場が掛けられていた。4月15日時点で出火原因は明らかになっていないが、仏メディアによると、消防当局が「火災は修復工事が関連している可能性がある」とみていることを報じている。

〔写真1〕焼け落ちたパリの象徴
〔写真1〕焼け落ちたパリの象徴
炎に包まれたノートルダム大聖堂。高さ90mの尖塔と屋根が焼け落ち、ゴシック様式を代表する歴史的建造物の一部が失われた (写真:AFP/アフロ)
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小屋裏の大量の木材が延焼か

 修復作業中の建築物に対する初期消火の難しさについて、防耐火技術に詳しい早稲田大学創造理工学部建築学科の長谷見雄二教授は、「欧州では文化財に対する初期消火の体制をかなり強化しているはずだ。しかし、建造物が修復作業中の場合、屋内にほこりなどが舞うなかで確実に火災を感知できるかは分からない。修復期間中の防火に関しては未解決の課題が多い」と指摘する。

 初期消火は難しかったとしても、延焼を止められなかったのは、なぜか。防火研究を専門とする東京理科大学大学院の関澤愛教授は、「屋根を支える大量の木材が延焼した可能性がある」と指摘する。「5年ほど前に大聖堂の小屋裏を見学したが、大断面の構造用木材を多用したトラス構造だった」と言う。

 欧州の歴史的建造物は石造の印象が強い。しかし、梁の間にアーチを架けて大空間をつくるボールト天井の小屋裏には、大量の木材を使用した構造が多いという。関澤教授は、1992年に発生した英ウインザー城の火災を例に挙げ、「過去の火災事例から考えても、歴史的建造物の防火で大切なのは、建物の内部から消火する仕組みだ」と語る。

 関澤教授は、「ノートルダム大聖堂には外部に設置した放水銃で屋根まで投水できる仕組みがあったと記憶している」と言う。しかし、「屋内に消火の仕組みが存在したか」「存在した場合は、ちゃんと機能したか」については、今後の検証を待つ必要がある。関澤教授は、「日本にも木造の歴史的建造物が数多く立っている。文化財保護の観点から、屋内で消火する仕組みづくりが重要だ」と説く。