太陽光発電の普及を促す取り組みが進んできた一方で、その仕組みにひずみが生じ始めている。前真之・東京大学准教授は、「厳しい現実」から目を背けず、再エネ活用に向けた社会システムへと変革する必要性を訴える。

エコハウスにおいて、「省エネ」と「創エネ」はまさに車の両輪。化石燃料への依存から脱却するためには、創エネ=再生可能エネルギーの活用は不可欠であり、住宅スケールで現実的に有用な創エネは太陽光発電ほぼ一択である。
日本の戸建て住宅への太陽光発電の導入は、世界的にみてもかなり早かった。しかし、補助金切れの2005年以降に失速。テコ入れのため、09年11月から「固定価格買い取り制度」(通称FIT)により、太陽光発電からの余剰電気の高値買い取り(09年当初は48円/kWh)が開始された。
このFITにより、「太陽光発電を屋根に載せれば高値買い取りでもうかる」と、太陽光発電は急速に普及した。太陽光発電協会の統計によると、搭載住戸は、17年度の時点で約238万戸にまで達している〔図1〕。
とはいえ、全国に2860万戸以上(住宅・土地統計調査2013)あるといわれる戸建て住宅において、太陽光発電を載せている比率は8.3%で、1割にも満たない。
エコハウスの普及のためにはこの比率をさらに上げる必要があるが、早くも逆風が吹き始めている。「賦課金(ふかきん)の負担増大」と「系統パンクによる発電抑制」である。
今回は、住宅用太陽光発電は売電で収入を得られるので万々歳、という話では残念ながら終わらない「再エネ活用」について、サステナブルな社会と向き合うために押さえておきたい現状について述べることにしよう。