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効率のスイートスポットが肝心

 新しい機種に買い替えても節電効果なし。高効率機種は高過ぎてペイしない……。エアコンの節電手段は尽きてしまったのだろうか。確かに、エアコンの心臓部であるヒートポンプの要素技術は改良され尽くされており、定格効率やAPFが今後急速に上昇する可能性はほとんどないのが現実。だが、「実使用における効率」を向上させる余地は残っている。

 その種明かしの前にまず、エアコンの効率と暖冷房の熱負荷の関係を頭に入れておこう〔図4〕。ヒートポンプは、処理する熱負荷の大小によって大きく変化する。おおむね定格能力(≒通常運転における100%能力)の半分辺り(中間能力)で効率が最大になり、暖冷房の熱負荷がそれより高かったり低かったりすると、いずれの領域でも効率が低下する。

〔図4〕エアコンの効率は暖冷房熱負荷の大小で大きく変わる
〔図4〕エアコンの効率は暖冷房熱負荷の大小で大きく変わる
暖冷房の熱負荷に応じたエアコンの効率変動。エアコンの効率は、能力の中間あたりで最も高くなり、高負荷・低負荷の領域では低下する。現在の主たる省エネ指標であるAPFの算出に用いられるのは定格効率と中間効率であり、特に中間効率の向上が優先されている(資料:前 真之)
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 APFの算出においては、この中間能力での効率が非常に大きな影響を持っているため、エアコンメーカーは改善に邁進してきた。だが、中間効率については、一般には公開されておらず、各メーカーの「トップシークレット」。APFの値がどのような性能値に基づき算出されているのか、部外者は全く検証できないのである。

実運転は高負荷&超低負荷

 またAPFの別の課題として、実使用での熱負荷との乖離がある。実使用において、エアコンをONにした直後は、できるだけ早く設定温度に到達しようとフルパワーの最大能力でダッシュする。ひとたび設定温度に達すると、室温維持のためにダラダラと超低負荷運転に移行する。

 つまり実使用では、ヒートポンプの効率が悪い、高負荷・超低負荷と両極端の運転に集中してしまう。中間効率メインのAPFの想定とは、大きく異っているのである。