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- 建設時に適法だったが、以降の法改正などで法不適合になった状態を「既存不適格」と呼ぶ
- 建設時に違法だった「違反建築物」の大規模修繕や増築などは、一般的なルールがなくハードルが高い
既存建築物を増改築する計画で設計者がまず気を付けるべきは、既存部分が現行法規に適合しているかどうかだろう。法に適合していれば、問題なく計画を進められる。一方、現行法規に適合していない場合には、「既存不適格」に該当するかどうかを見極める必要がある。
既存不適格建築物は法文上で定義された用語ではない。「現に存在している建築物」で、その後の法改正によって法不適合になったものに対しては建築基準法が適用されない旨を記した法3条2項の内容を示した言葉として使われている。
ここで注意を要するのは、敷地内に法不適合な状態で立っている建築物の全てが既存不適格に該当するわけではないことだ。建設時点での建築基準法に違反していた建築物は対象外となり、「違反建築物」として扱われる。
違反建築はいったん是正工事
既存不適格建築物に対して大規模な修繕・模様替えあるいは増改築等を行う場合、基本的には既存不適格の部分にも新規定を適用する必要がある。しかし、全ての項目を新規定に合わせることは難しいため、法86条の7では制限の緩和を定めている〔図1〕。
悩ましいのは、既に存在している建築物が違反建築物である場合だ〔図2〕。緩和規定を適用する形で大規模修繕・模様替え、増改築する場合には、違反建築物を是正してから計画を進めるという流れになる。緩和を適用できるのは、建設時に適法だった既存不適格部分のみだからだ。
ただし、こうしたケースにおける一般的な手続きルールはないと思われる。個々の事例によって、特定行政庁と打ち合わせしながら進める必要がある。
なお、建築基準法施行以前に建てられた木造の民家なども、大規模修繕・模様替えあるいは増改築する場合には原則として建築確認が必要となる。