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- 容積オーバーの既存不適格建築物へのエレベーター棟設置が可能になった
- 2014年、エレベーターが容積率算定の対象外に
- 道路斜線、隣地斜線、日影規制は遡及する
近年、古い団地などのバリアフリー化に伴ってエレベーターを増築する事例が増えてきている。床面積の増加を伴うエレベーター棟の増築は原則、確認申請が必要となる。
2014年7月に施行された改正建築基準法で、容積率算定の基礎となる延べ面積に「昇降機の昇降路の部分」の床面積を算入しないことになった(法52条6項)。ここで言う「床面積に算入しない昇降機」は「エレベーター」に限定される(建築基準法施行令135条の16)。小荷物専用昇降機やエスカレーター、あるいはエレベーターの機械室は、不算入の対象にならないので注意してほしい〔図1〕。
このほか、エレベーターの設置に付随して設ける共同住宅や老人ホーム等の共用の廊下、階段も床面積に算入しなくてよい。
道路斜線などには適合させる
法改正以前には、容積率をオーバーしている既存不適格建築物にエレベーター棟を増築する場合、既存部分の一部を減築して現行の容積率制限に適合させなければならなかった。改正後は、既存建築物を減築せずにエレベーター棟を設置できるようになった。既存共同住宅の廊下の一部を増築してエレベーターを設置することも可能だ。
ただしエレベーター棟の増築に際しては、新設部分および既存部分に対し、道路斜線、隣地斜線および日影規制の現行法が遡及する。計画に際しては、これらに適合させることが求められる。
なお、エレベーターの昇降路の床面積は、建築面積や延べ面積を求める際には算入する。防火・準防火地域以外で床面積が10m2以内の場合には確認申請不要だが、この床面積にも昇降路の床面積を入れる〔図2〕。
増改築等や大規模の修繕・大規模の模様替え、用途変更は原則として建築確認が必要だが、完了・中間検査の要否は工事によって異なる。
完了検査が必要なのは、増改築等および大規模の修繕・大規模の模様替えだ。これらは新築と同様に工事が完了した際、指定確認検査機関などに完了検査の申請をして完了検査を受けなければならない。
用途変更は、建築確認が必要な場合でも完了検査は不要だ。しかし用途変更の工事完了時に、建築主事に工事完了届を届け出る必要がある。
中間検査については、建築基準法 で定めているのは、新築、増築などを問わず「3階建て以上の鉄筋コンクリート造の共同住宅」だけだ。それ以外の中間検査は、特定行政庁がその地方の状況その他の事情を勘案して建築物の構造、用途もしくは規模を限って指定している。