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内藤廣氏に、平成という時代の印象と「ポスト平成」の建築界について聞いた。氏は、「平成の時代に建築界が達成できたことは何もない」と言いつつも、「この30年間の騒がしさは無駄ではなかった」と続ける。

「平成は『予告編』、 これから本番が来る」

(写真:山田 愼二)
(写真:山田 愼二)
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平成後期には震災復興や五輪需要で、建設現場の人手不足・人材不足が顕著になりました。現場の技術力は落ちていると思いますか。

 明らかに落ちています。例えば、杭の未達問題にしても、免震ゴム偽装にしても、ダンパー偽装にしても、最後のところで、それはやってはいけない、という倫理的な判断で止められる可能性がいくつもあったはずです。仕事に対する意地やプライドが希薄になっているから、ストンと下まで落ちてしまった。

 江戸時代につくり上げたモノに対する意地とプライドを、バブル以降の経済行為の中で蕩尽(とうじん)してきた。次の100年に向けて、またゼロから組み上げるんでしょうね。

再びゼロからつくり上げなければならないと。

 バブルのときには、まだ取り戻す可能性があると思っていました。今はもうゼロからつくり上げないと無理だなと思います。次のことを考える時代に来ている。当面は、足りない部分を補っていくのがデジタル技術なのかもしれませんね。

ポスト平成を担う人材をどう育成していくべきだと思われますか。

 これまでの建築教育は、基本的に間違っていると思っています(笑)。建築雑誌に2~3回載ると、大学から講師の誘いがあって、それで大学の先生になって教えて……という拡大再生産をやっているわけでしょう。その中で生まれてきた人たちは、それがいいと思っています。

 同じように、構造とか設備とかに対しての教育もおかしいと私は考えています。領域を超えて、トータルにモノをつくろうという方向になっていません。大きな問題です。

教育は変えられますか。

 どうでしょう。この国は中から変えようと思うと、とんでもないエネルギーがいる。いつも外力によって変わってきた社会なんです。

変化を起こすほどの大きな外力を待つしかない?

 そうですね。だから準備しましょう。想像力を豊かにしておくのです。建築家が何をするのか、何ができるのかということを。特に、若い世代が本当に真剣になって議論していいのではないでしょうか。議論すると同時に、そういうことを自分の思考の射程内にちゃんと入れておく。思考訓練です。

 30年を振り返ってみるというこの企画も、ひとつの思考訓練ですよね。そのときにできたこと、できなかったこと、変わらないこと、変わったこと、というのを思考してみる。南海トラフ地震が来ることは分かっているのだから、そのときに役に立つ話が、この30年の中にいくつもあるはずです。

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