建築では音を巡るトラブルが後を絶たない。工夫して設計したつもりでも、受音者の感じ方によっては騒音が生じていると捉えられることがある。多様化する受音者の耳に配慮した防音設計は、どうすれば実現できるのか。シリーズ「『想定外』の教訓」の第1回は、音のトラブル事例から、見落としがちな設計・施工のポイントを学ぶと共に、音問題の背景を探る。

特集
過敏になる音問題
トラブルに学ぶ「多様化する受音者」への配慮
目次
-
順法でも近隣トラブルに発展
社会的な要請から全国で整備が急務となっている保育施設。配慮を重ねて設計しても音のトラブルに巻き込まれるケースは多い。神戸市の認定こども園の事例から、耳に配慮した設計の難しさが分かる。
-
建物内の騒音は設計で解決
音は集合住宅で特にトラブルになりやすい。音の捉え方は人それぞれ。客観的な指標を持ち出しても、問題の解決に至らないケースが少なくない。しかし、建物内の騒音であれば「設計時に9割が解決可能」という専門家もいる。
-
空気は遮音・吸音、固体は防振
建物には、音の伝わりやすさに関して設計者が見落としがちなポイントがある。音の伝わり方を理解したうえでそうしたポイントを押さえれば、効果的な騒音対策が施せる。基本的な対策は、空気伝播音が「遮音・吸音」、固体伝播音が「防振」だ。建物で実際に生じた音トラブルを紹介し、その原因と対策を解説する。
-
パシッと聞こえたら熱伸縮を疑え
何らかの音が聞こえるものの、どこから発生するのか特定しにくい。熱や風などに起因する「異音」も、建物に関わる音トラブルとしては少なくない。数多くの事例を分析することで、異音の発生源と聞こえ方の関係が見えてきた。