都心で下層階に保育施設、中上層階に賃貸住戸とシェアハウスを設けた集合住宅だ。シェアハウスは最上層に配してプレミアム感を高めるとともに、賃貸住戸を含めた住民交流を促す“装置”としての役割も担う。
今年1月に完成した「プロシード両国2(ルーフトップシェアハウス)」は、複合用途の集合住宅だ。免震基礎の地上10階建てで1~3階に認可保育所、4~8階に賃貸住戸、9・10階にシェアハウスを配している。
この物件の開発は、東京都が福祉貢献型建物の整備促進を目的に進める「官民連携福祉貢献インフラファンド事業」に基づくプロジェクトだ。スターツアセットマネジメント(東京都中央区)をファンドマネジャーに、都とスターツグループが折半出資で投資事業有限責任組合を組成。特別目的会社(SPC)を介して、周辺で不足する保育施設をテナントに入れる前提で開発した。総事業費は土地・建物の合計で約12億円。
共用空間を生かす仕掛け
設計を手掛けたのは、オンデザインパートナーズ(横浜市)。計画上の最大の特徴は、シェアハウスを最上層に配した点だ〔写真1~5〕。シェアハウスは一般に、賃貸住戸に比べて賃料の安さが魅力。事業者も最低限の仕様・仕上げで建設する例が珍しくない。その点で、賃貸条件でアドバンテージを見込める最上層に置くのは、定石から外れる計画だ。
このシェアハウスは、立地の良さと最上層ならではの眺望とともに、住室内はシンプルだが中層階の賃貸住戸と同等の仕上げ。さらに広々とした共用のリビング・ダイニング・キッチン、男女兼用階と女性専用階の設定に加えて、吹き抜けの中庭から階段で昇り降りできる屋上庭園を目玉に、「プレミアム化」を計った。平均賃料は共益費込みで月額8万円前後と、周辺の一般的な賃貸ワンルーム並みの水準だ。
屋上庭園は物件全体の共用空間で、賃貸住戸〔写真6、7〕の住人もエレベーターなどで自由に使える。オンデザインパートナーズの西田司代表はプランを次のように説明する。 「シェアハウスは、住まい手が単独の支出だけで確保できない空間的価値を利用できることがメリット。他方、通常の賃貸住戸だけの建物に庭園などの共用空間を設けても、あまり活用されない。シェアハウスの住人は日常的に共有空間を利用するので、その様子を見て賃貸住戸の住まい手も利用しやすくなる」