報酬や契約の在り方が変化している。1月21日には新業務報酬基準「告示98号」が施行された。2020年4月には、民法(債権法関連規定)の改正法施行が控えている。建築実務者を対象とした日経アーキテクチュア調査では「現在の報酬額が妥当」との回答はわずか6%弱。業務報酬基準の見直しについては、約半数が「業務に影響があると思う」と回答した。設計・監理料の適正化に向けて、これまでの業務の在り方を再点検する必要がある。

新報酬基準の落とし穴
市場環境が激変する「令和時代」に備えよ
目次
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「これでは品質が確保できない」
山本理顕氏と横浜市が監理料巡り対立
業務報酬は設計者にとって悩ましい問題だ。公共の仕事であっても、国の基準に満たない報酬額で多くの設計者が仕事を受ける。監理料を巡って横浜市と対立する山本理顕氏は、設計者の働きを低く見積もる風潮に憤る。
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実態調査を基に略算表を刷新
標準業務量を見直し、標準外業務も明確化
実態に即した基準へと見直す─。国土交通省は10年ぶりに業務報酬基準を改訂。建築士事務所への実態調査を基に、業務報酬の算定基準を見直した。新基準で報酬は増えるのか。改訂のポイントを見ていこう。
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小規模建物で標準業務量が半減
新業務報酬基準の落とし穴(1)
告示98号では、国土交通省が実施した実態調査を踏まえ、略算表に示す標準業務量を見直した。旧告示と比べ、3000m2付近を境に小規模建築物の標準業務量が減少。中小規模事務所には厳しいルール変更となった。
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基本と実施の比率を約3対7に設定
新業務報酬の落とし穴(2)
発注方式の多様化に対応し、告示98号は略算方法が使える範囲を拡大。基本設計と実施設計の業務量比率を技術的助言で約3対7と示した。しかし、この比率に対して実態に即しているのかと疑問視する声もある。
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約半数が報酬の算定方法を「見直す」
建築実務者の意識調査に見る新基準への期待と不安
適正な報酬の確保は、人材確保や事務所経営に直結する問題だ。告示98号の施行を受けて、報酬算定方法の見直しを検討する設計事務所は多い。新基準をいかに報酬増加につなげていくか、アンケート調査で探った。
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「契約社会」転換で重くなる責任
約款改訂を機に報酬の在り方を見直せ
契約行為の基本ルールである民法(債権関係規定)の改正法施行が、約1年後の2020年4月に迫った。ますます重くなる専門家責任を理解し、業務や報酬の在り方など、「令和時代」のビジョンを描く必要が出ている。