総人口で世界1位の中国を追い、2024年にはその座を奪うインド。山積する課題の解決に新たな技術を用い、21世紀の成長国としての道を探る。一方、ひと足早く近代化を成し遂げてきた中国は、さらなる飛躍に向けた都市戦略を立てる。超大国ならではの悩みと、それを跳ね返す野心的なビジョン──。現地取材を基に、日本の都市開発に対するヒントや新たなビジネスの機会を探る。

インド、中国 都市開発の野心
成長の圧力が生む壮大なビジョン
目次
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膨大な課題をスマート技術で解決
国策として、広大な国土全域でスマートシティー開発を推進するインド。まずは、現在決まっている99都市をプロットしたマップと共に日本との関係なども含め、都市に関連するトピックスを紹介する。
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インドの今を知る7つのキーワード
国土の面積は約329万km2で日本の約9倍(係争地を含む)。総人口は13億900万人(2015年、国連データ)で世界2位。この順位は、2024年に1位の中国と入れ替わる。そして2050年ごろまで総人口に占める生産年齢層(15~64歳)の割合が増え続け、経済成長を支える。実質GDP成長率は、この数年…
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デジタルで既存国と異なる道に
巨大成長国におけるビジネスの可能性
インドの成長は、ユニークな道をたどるはずだ。国の強力な主導により、土木・交通などハード面を上回るスピードで、IT・デジタル領域のインフラ整備が進む。人口増に伴う課題が山積し、100都市で進めるスマートシティー施策も成熟国とは異なる意味を持つ。先行する国に学び、新しい技術も使って近代化や都市化にアプ…
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世界2位の都市人口、どう支える?
デリー/スマート技術
首都、デリー。急増する都市地域の人口は、東京に次いで世界2位の約3000万人(国連の2020年予測)。2030年には東京を抜く。
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交通機関のスマート化をけん引
アーメダバード/モビリティー革命
インド西部の工業都市、アーメダバード 。現モディ首相が2001年から14年まで州首相として敏腕を振るい、経済発展に導いた場所だ。
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3D基盤と並行で新州都建設
アマラヴァティ/デジタルツイン
インド政府のスマートシティーミッションのなかに唯一、ゼロからつくる都市がある。2014年6月、アーンドラ・プラデーシュ州からテランガーナ州が分離。これに伴って新州都に決まったクリシュナ川下流域のアマラヴァティだ。
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「最古の都市」にスマート化の波
ヴァラナシ/デジタルヘリテッジ
ガンジス川中流域に紀元前には存在したと記録される、世界最古の都市の1つ、聖地ヴァラナシ。現モディ首相の選挙地盤だった場所で、政治的な要所でもある。
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巨匠建築家の都市も俎上(そじょう)に
チャンディガール/モダニズム再生
ル・コルビュジエが新州都計画を手掛けた北部の都市、チャンディガール。富裕層の市民が多く、生活水準が高い。
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公共交通網強化でさらなる成長へ
近年、公共交通網の建設を強力に推し進めてきた中国。主要な大都市間の移動時間は短縮し、交通ネットワークの結び付きが強まりつつある。それに伴い、副都心の開発が活気を帯び、さらなる経済発展の兆しが見えてきた。
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駅と街の一体開発でハブ化加速
大湾区/TOD(公共交通指向型開発)
中国政府が力を入れている国家プロジェクトの1つが「大湾区(グレーターベイエリア)」だ〔図1、2〕。広東省の9都市と特別行政区である香港、マカオが連携し、1つの大都市圏を構築しようというものだ。経済発展と対外開放をリードし、中国全体が発展する ための“エンジン”になると位置付けている。中国国務院は2…
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巨大地下空間や保存で差別化
上海/高度利用・サステナビリティー
過密化の進む上海市内では、高度利用への関心が高く、複合開発が盛んだ。高度利用というと、高層部に目が行きがちだが、近年の上海市の大規模開発では、地下やペデストリアンデッキなどによる歩行者ネットワークが計画を特徴付けている。
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中国の今を知る5つのキーワード
駅と街を一体的に開発するTOD(Transit Oriented Development、公共交通指向型開発)では、駅から街へと人を流す計画が重要だ。駅と駅上施設のレベル差をつなぐ動線空間「ステーションコア」と、それらを多方向に展開する動線空間「アーバンコア」の配置が鍵となる。
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都市化に応じた新しさを提案
巨大成長国の都市開発の市場に日本企業はどう対応するか。日建設計の取り組みにヒントを探ってみる。