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国に独自の課題も明らかに

 建設大手に関しては、インドに拠点を置くかどうかの対応は異なる。進出する建設会社は、各都市近郊に開発される日本企業向けの専門工業団地における工場などの建設を、主な受注案件としてきた。

 会員企業による現地調査を19年2月に行った海外建設協会海外事業部の鈴木恵氏はこう語る。「中間層が確実に伸び、今後の不動産市場のリード役になる。層が厚くなり、付加価値のある住宅や関連施設の需要が高まれば、投資も含め事業参画を検討する企業は増えると見ている」

 製造業などの経験から、ビジネス環境は把握できる〔図2、3〕。例えば、州によって法の運用が異なるなどインド独自の課題がある。毎年の予算編成時に改変がなされる税制の複雑さを阻害要因に上げる声もある。

〔図2〕超大国のマーケットに膨らむ期待感

インドの有望理由(中期的)(回答社数計:197社)

  • 1 現地マーケットの今後の成長性 82.2%
  • 2 現地マーケットの現状規模 35.5%
  • 3 安価な労働力 28.4%
  • 4 組み立てメーカーへの供給拠点として 21.8%
  • 5 優秀な人材 16.8%

中国の有望理由(中期的)(回答社数計:221社)

  • 1 現地マーケットの今後の成長性 72.9%
  • 2 現地マーケットの現状規模 63.8%
  • 3 組み立てメーカーへの供給拠点として 24.0%
  • 4 産業集積がある 22.2%
  • 5 現地のインフラが整備されている 13.6%
日本の国際協力銀行による調査。中期(今後3年程度)の事業展開先の有望国に、インドや中国を挙げる理由。なお中期では中国が有望1位、インドが2位。長期(今後10年程度)ではインドが9年連続1位。調査対象は製造企業 (資料:国際協力銀行)
〔図3〕ビジネス進出を阻む壁は?
インド(回答社数=188社)
1位 4.現地のインフラ整備が不十分なため 34.6%
2位 5.現地の法制度の整備が不十分なため 20.7%
3位 1.既に一定規模の事業を行っており、これ以上事業展開は考えていない 20.7%
4位 2.他社との競争が激化しているため 19.1%
5位 6.現地の政治・社会情勢が不安定なため 9.0%
6位 3.現地の労働コストが上昇しているため 5.9%
7位 7.現地の経済が停滞しているため 3.2%
中国(回答社数=213社)
1位 1.既に一定規模の事業を行っており、これ以上事業展開は考えていない 60.6%
2位 3.現地の労働コストが上昇しているため 42.7%
3位 2.他社との競争が激化しているため 26.3%
4位 6.現地の政治・社会情勢が不安定なため 7.0%
5位 5.現地の法制度の整備が不十分なため 5.2%
6位 7.現地の経済が停滞しているため 4.7%
7位 4.現地のインフラ整備が不十分なため 0.0%
国際協力銀行による調査。その国が「有望ではない」とする理由。インドに指摘されるのはインフラ整備の遅れで、資材調達などに支障を来す原因になる。不動産開発・販売規制に関する法律「RERA」の施行など、透明性を上げるための制度改革は順次進んでいる (資料:国際協力銀行)

 一方、中国と比較した場合、政治体制などに左右されるリスクが小さいと見る向きもある。「民主主義の国としてプロセスの透明性を重んじる点、公用語が英語である点など仕事のしやすい環境であると感じた」。インド工科大学ハイデラバード校キャンパスデザイン支援プロジェクト(「膨大な課題をスマート技術で解決」参照)に東京大学チームとして参画した建築家の大野秀敏氏(当時・東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)はこう振り返る。

 インドでは日本の国際支援の成果が知られるため、日本勢の進出を歓迎する声が大半だ。「デジタル・インディア」(「インドの今を知る7つのキーワード」参照)に見られる同国の制度設計の巧みさや政策実行力が都市開発分野に発揮されれば、協力側にも新たな知見をもたらす取り組みが生まれ得る。

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