少子高齢化や新築需要の減少が進む日本。新たな収益源の確保は建設業界にとって死活問題だ。それでも外に目を向ければ、建設市場規模が拡大するアジアマーケットが広がる。前号の特集では勢いのある都市を現地からリポートした。今号は、これから一歩を踏み出す設計者を後押しすべく、現在進行中の案件で「契約」「営業」「人・体制」に焦点を絞り、成功の秘訣を探る。

いざアジア
失敗しない踏み出し方
日本にいながら海外進出 もう1つの収益源に
目次
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実現・成功の確度高まる
依頼手段や求められる意匠に変化
いまや建築の情報は、ウェブやSNSを通じてあっという間に世界へ拡散される。今日にも唐突に海外から依頼が届くかもしれない。最新プロジェクトから傾向を知り、起こり得るリスクを学ぶことで海外進出のチャンスを逃すな。
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日本の4倍速で5万m2を設計
中国・武漢/ICU:設計料は4分割でこまめに回収
総勢4人の設計事務所が、中国の大手スマートフォンメーカーが建設する新本社をコンペで獲得した。設計開始から約2カ月で着工。ローカルアーキテクトとの作業分担や設計料の回収など、国内とは違うメリハリが求められた。
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初海外案件で駅のリノベを実現
韓国・ソウル/成瀬・猪熊建築設計事務所:公共実績なしでもソウル市の指名コンペ獲得
日本では、公共空間を設計したくても、実績がなければ受注は容易でない。しかし海外では事情が変わり、門戸を開ていることが多い。成瀬・猪熊建築設計事務所は韓国での展覧会参加が、初の海外かつ公共案件につながった。
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急成長国の「醍醐味」に向き合う
インド・ムンバイ/Squareworks:潜在市場を実感、都市問題解決への貢献も
成長の道を駆け上がるインドの可能性に正面から向き合い、2016年、金融都市として経済をけん引するムンバイの南部に設計事務所を構えた。東京の事務所と、2拠点を行き来する活動を模索してきた。
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海外仕様の組織をデザイン
フィリピン・マニラなど/NAP建築設計事務所:別会社をつくり国内への影響回避
中村拓志氏の初海外案件がフィリピンで着工した。海外から依頼を受けながらも約10年、政変などで実作に至らず苦い経験をした。そうした原因を分析して講じた契約や組織づくりには、独自のこだわりがある。
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SNSなどチャンスは身近に
アジアの最新プロジェクト一覧
国内の若手や大手設計事務所などがアジアで進めているプロジェクトをまとめた。若手には、概要に加えて受注経緯や報酬計算などビジネスのコツも聞いた。きっかけは、知人からの紹介やSNSを通しての突然の依頼など、様々だった。一足先にアジア進出を果たした彼らに学び、チャンスをつかもう。
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丸の内の経験や機動力生かす
台湾・台北など/三菱地所設計:台北南山広場の実績とチーム力で受注が拡大
台北101の隣接地に2018年に竣工した「台北南山広場」。三菱地所設計では、この大型施設の設計をきっかけに、台湾での設計受注が拡大している。その中心を担うのが、役員の大草徹也氏をかじ取り役とする3人だ。
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日本人建築家の優位性って何?
海外から見た日本ブランド
2019年のプリツカー建築賞が5月24日、磯崎新氏に授与される。この10年で日本人の受賞は4組目。受賞者の多さはアジア進出のためのブランド力となっている。しかし、さらなる飛躍のためには、日本建築界の強みを客観的に知っておく必要がある。アジアの建築界に詳しい3人の専門家に聞いた。