全4579文字
PR

市場は4年後に1.2倍へ拡大

 海外、とりわけ日本と距離の近い中国やASEANでは、米中貿易摩擦の影響で鈍化したとはいえ、建設市場はまだ伸びると考えられる。

 みずほ銀行産業調査部が2018年12月に発表した「日本産業の中期見通し(建設)」によると、19年の中国名目建設業付加価値額は約96兆円(5兆9959億元)、23年にはその約1.2倍まで拡大するという。ASEAN(ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアの合計)も19年は約18兆円(1651億米ドル)、23年にはその1.2倍まで増えると予測する。

 今後、日本国内で新築需要や大型案件が縮小することが見込まれるなか、アジアは魅力的な市場だ。

 本特集では、アジアのプロジェクトに力を入れ始めた設計事務所や事業者に、受注経緯や契約、報酬計算の仕方などを取材した。

 その結果、かつてのアジアビジネスのイメージからは大きな変化が見て取れた。1つは受注経緯だ。メールやSNSを通じて、海外から気軽に依頼が届く。海外のウェブニュースやインスタグラムで日本の建築が紹介されることも、受注に影響するという。

 もう1つの変化が、事業者や建築関係者の意識だ。欧米や日本への留学を経験して帰国し、都市や建築に造詣の深い人々が増えている。彼らは建築に華美で目立つ意匠を、かつてほど求めない傾向がある。代わりに、地域文化や周辺環境に配慮し、機能美を備えた質実な建築が評価されやすくなった。

 アジアの建築設計者たちと交流の深いフジワラテッペイアーキテクツラボ(東京都渋谷区)の藤原徹平主宰は、「中国では、年齢や実績を問わず建築家を選ぶ」と話す。無名の若手から、世界の建築賞を総なめにした有名建築家まで幅広く起用する。

日本を知ることが武器になる

 一方で、契約や商習慣の違いについて、慎重に対処する必要があることは変わらない。アテナ法律事務所の林陽子弁護士は、「海外の建築家協会が出しているモデル契約書が参考になる」と話す(詳細:「言いなり」は信用されない)。

 さらに、「現地で建築生産を調べるべきだ」と藤原主宰。建材は何が使えるか。鉄骨はどこで入手できるのか。日本の常識で動くと失敗しやすく、現地で確かめる必要がある。

 今回の取材で多くの人が口にしたのは、意外にも「日本の法規制をしっかり学ぶことの大切さ」だ。例えば、防耐火規制でなぜその仕様を求めるのか、背景や仕組みまで分かっていれば、現地の防耐火規制との違いや共通点が理解しやすくなる。

 アジアでは大規模案件をつかむチャンスがすぐ近くに転がっている。そこで学ぶ経験は国内でも生かされるはずだ。一歩を踏み出そう。