体育館のフローリングが剥がれ、球技に興じる利用者に突き刺さる──。想像するだに痛々しい事故が、各地で発生している。木の性質を踏まえた設計や施工、管理をしないと、事故は繰り返される。
2019年2月26日午前10時過ぎ。名古屋市東スポーツセンター第1競技場でバレーボールをしていた女性が床に滑り込んだ際に事故は起こった。フローリングから剥がれた長さ15cm、幅3cm、厚さ2cmの木片が右足から尻にかけて突き刺さり、大けがを負ったのだ〔写真1、2〕。
その4日前の22日午後2時30分ごろ、埼玉県三芳町の総合体育館でも同様の事故が起こっていた。フットサル大会のウオーミングアップでスライディングをした男性の尻に長さ30cmの木片が刺さった。男性は手術で木片を摘出。8日間の入院を余儀なくされた〔写真3、4〕。
木片が剥がれて刺さる事故は頻繁に発生している〔図1〕。なぜフローリングは「凶器」に変わるのか。消費者庁の消費者安全調査委員会がこの種の事故を分析した17年5月の報告書や、フローリング業界への取材を基に、原因と対策を探る〔図2〕。
発生年 | 運動種目 | 負傷部位 | 入院日数 | 完成または全面改修からの年数 | 床の種類、表面の材質 | 工法 |
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2019年 | フットサル | 左臀部 | 8日 | 13年 | 複合、カバ | 特殊張り |
2019年 | バレーボール | 右足~臀部 | 不明 | 17年 | 単層、アサダ | 特殊張り |
2017年 | バレーボール | 大腿部 | 不明 | 7年 | 単層、カナディアンメープル | 普通張り |
2015年 | フットサル | 背中 | 24日 | 25年 | 単層、カバ | 特殊張り |
2014年 | バレーボール | 腹部 | 12日 | 31年 | 不明 | 不明 |
2013年 | バレーボール | 腹部 | 27日 | 2年 | 複合、カバ | 普通張り |
2013年 | バレーボール | 腹部 | 4日 | 26年 | 単層、アサダ | 特殊張り |
2011年 | バレーボール | 胸部 | 7日 | 8年 | 単層、カバ | 特殊張り |
2006年 | バレーボール | 胸部 | 7~10日 | 16年 | 不明 | 不明 |
不明 | バレーボール | 左大腿部~下肢 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
〔図1〕バレーボール中の重大事故が多い
床の種類は単層フローリングを「単層」、複合フローリングを「複合」と記した(資料:消費者庁の資料や取材を基に日経アーキテクチュアが作成