突然、爆発音が響き、全面に細かなひびが広がる──。強化ガラスは外力が作用していない状態でまれに自然破損することが知られている。自然破損が頻発した呉市庁舎では、調査を進めるうちに意外な事実が判明した。
広島県呉市の庁舎で、2015年末の竣工から2年半のうちに、異なる2社が納入した強化ガラス3枚が相次いで割れた〔写真1、図1、2〕。いずれも外力が加わっていない状態で突然割れる「自然破損」だった。
最初の破損は17年2月2日。7階執務室に設置していたセントラル硝子製の強化ガラスだ。市は施工した五洋建設に対応を依頼。同社は瑕疵(かし)担保期間中のため、無償交換した。
安心したのもつかの間、同年4月5日に、4階執務室で再びセントラル硝子製の強化ガラスが破損した。五洋建設はガラスを交換すると共に、原因の調査に着手。当面の安全対策として、高さ3m以上の位置にあるガラス全てに飛散防止フィルムを張った。
すると今度は西エントランス上部の旭硝子(現AGC)製合わせ強化ガラスが割れた。18年6月14日、来庁者がいる時間帯だった。呉市総務部の岡本茂宏課長は「1階の職員が慌てて連絡してきた」と振り返る。合わせガラスは複数のガラスを中間膜で接着しているため、割れても脱落しにくいが、破損面に飛散防止フィルムを張り、設置した足場を養生シートで覆って万一の脱落に備えた。
瑕疵担保期間外ではあったが、ごくまれにしか発生しないはずの自然破損が続いたことを重く見た五洋建設は、こちらも無償交換した。