住宅のエネルギー収支を実質ゼロにする「ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」。政府が普及を進めるなか、大手住宅会社を中心に建設棟数が増加。設計の選択肢も増えてきた。2019年5月に成立した改正建築物省エネ法では、建築士による省エネ性能の説明義務化が盛り込まれた。ワンランク上の性能を住宅設計の売りにすることが、これからの生き残りのカギとなる。戸建て住宅、集合住宅の先進事例を紹介するとともに、ZEHを巡る動向を解説する。

ZEH時代の省エネ攻略法
ワンランク上の性能で差をつけろ
目次
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国内有数の豪雪地でZEHに挑む
新・魚沼の家(新潟県十日町市)
設計:伊礼智設計室 施工:フラワーホーム「新・魚沼の家」は、施工を手掛けたフラワーホーム社長の自邸だ。豪雪地にあって同社初のZEHに挑戦。設計者の伊礼智氏は、高い省エネ性能を確保しつつリビングと屋外デッキがつながる空間を生み出した。
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シェアようやく15%超え 設計の多様化が追い風
新築戸建て住宅市場のなかで、ZEHやNearly(ニアリー) ZEHの占める割合が15%を超えた。エネルギー消費の削減や室内の快適性確保を踏まえた設計手法は多様化している。
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築38年のリノベで「ZEH超え」を実現
北海道の家(札幌市)
設計・施工:アルティザン建築工房札幌市内の築38年の住宅を改修した「北海道の家」。地元のリノベーション事業者がサッシメーカーとタッグを組んで、全国でも最高レベルの断熱性能を実現。ZEHを上回る高性能の省エネ住宅に再生した。
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省エネ・意匠両立へ キーデバイスは高断熱
既存住宅の性能向上改修は、省エネ住宅に向けたサッシメーカーからの提案の1つだ。大手2社は、開放的な間取りと省エネ性を両立させる新たな窓部材を相次ぎ製品化し、新築、改修の両面で省エネ住宅ニーズに挑む。
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中層で初の「Nearly ZEH-M」
ライオンズ芦屋グランフォート(兵庫県芦屋市)
設計:浅井謙建築研究所 施工:佐藤工業 事業者:大京5階建ての中層集合住宅として日本初の「Nearly ZEH-M(ニアリー・ゼッチ・エム)」となる、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)評価を得た分譲マンションが誕生した。省エネと創エネで基準1次エネルギー消費量を75%以上削減する。
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集合住宅の基準公開から1年 「低層・賃貸」がけん引役に
集合住宅の住棟を対象とするZEH-M(ゼッチ・エム)シリーズの基準が公表されてから1年。以来、約180棟のZEHマンションがBELSの評価を受けている。棟数ベースでけん引役となっているのは、低層の賃貸住宅だ。
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「省エネのソムリエ」を目指せ
快適性・健康性備えた豊かな暮らし提案がカギ
高い断熱性能を暮らし方の提案に組み入れた産学協同による分譲住宅開発が、山形市で進んでいる。公園のように整備した住宅地とウッドデッキを備える省エネ住宅で、日々を快適に暮らすコンセプトだ。