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 カプセルホテルの部屋の2倍ほどの空間を「茶室」に見立てた新しいホテルが誕生した。東京・人形町に2019年3月にオープンした「hotel zen tokyo(ホテル ゼン トウキョウ)」だ。運営するのは、スタートアップ企業のSEN(セン)(東京都中央区)。同社を共同創業したのは、ホテルの設計者でもある各務太郎氏だ〔写真1〕。まだ31歳と若い。

〔写真1〕約1.5畳の「茶室」が並ぶホテルの室内
〔写真1〕約1.5畳の「茶室」が並ぶホテルの室内
zen tokyoの宿泊フロアに立つ各務氏。設計・監理は、10architectとBACCHUSが協力(写真:日経アーキテクチュア)
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 早稲田大学で建築を学ぶも、電通に入社。3年後には読売広告大賞最優秀賞を獲得した。するとあっさり会社を辞め、米国ハーバード大学デザイン大学院へ。再び建築と向き合い、都市デザインを研究した。帰国すると、大学院で考えた極小空間を東京のど真ん中につくる夢に向かって走り出した。第一歩がzen tokyoだ。

 最終目標は安い家賃で住める狭い空間を都心に設けること。しかし、いきなり格安な賃貸物件を開発するのは無理。そこで極小空間で構成するホテルをつくり、「都心で1日暮らす体験」を提供しようと考えた。

 注目したのは茶室だ。「茶の湯の世界では、空間は狭ければ狭いほど価値が高いとされる。空間の狭さを頭の中の想像で補うという精神が根底にあるからだ」(各務氏)

大学時代から計画的に行動

 各務氏は戦略家だ。「電通に入ったのは、尊敬する建築家、レム・コールハース氏が20代をジャーナリストや脚本家として過ごしたことを見習った。メディアの使い方や言葉のチカラを学んでからの方が、都市にインパクトを与えられると思った」

 実際、広告の経験は役立っている。「シナリオさえ描ければ、それを映像に『翻訳』すると映画になるし、空間に訳せば建築になる」と言う。各務氏が描くシナリオは、都心の狭い空間で幸せに暮らすこと。ヒントは日本発とも言える漫画喫茶にあった。「狭い部屋にこもって大好きなマンガを読みふける人は幸福度が高いはずだ」

 とはいえ、実際に泊まるには快適さも必要。そこでシングルベッドを置ける広さを標準とした。結果的に千利休が目指したという1.5畳の茶室とほぼ同じ広さになった。

 各務氏は自らが設計者になり、既存のビルをリノベーションしてzen tokyoのオープンにこぎ着けた。


かがみ たろう:1987年東京都生まれ。2011年早稲田大学理工学部建築学科卒業、電通入社。CMプランナーとして広告業務に従事。14年電通退社。15年ハーバード大学デザイン大学院留学。17年同大学院都市デザイン学修士課程修了。18年SEN共同創業