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 ロボットが建築をつくる時代をにらみ、職人技をデジタル情報に置き換え、ロボットの技能育成に挑む竹中司氏。コンピュテーショナルデザインという概念を示し注目を集めた。現在はデジタルエンジニアと自らの職能を位置付ける。

 教壇に立っていたカナダ・ブリティッシュコロンビア大学で2005年、3次元(3D)プリンターに出会い「画面の中のものが、手に取れるようになった。時代が変わる」と感動した。設計の概念を拡張し、次世代の道具を使って建築を変えていこうと、2009年にアンズスタジオ(東京都世田谷区)を設立。人間の脳の働きを拡張したアルゴリズムや最適化を用いて設計する方法論をコンピュテーショナルデザインと名付け、デザインエンジニアとして活動を始めた。

ホールの内装材をロボット加工

 多くの建築家と協働し、複雑な情報を形態化していく。代表プロジェクトの1つが岩手県の「釜石市民ホール」(設計:aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所)〔写真1〕だ。

〔写真1〕デジタル技術で形態解析から部材加工まで
「釜石市民ホール」では、ホール内の形態解析を行った(写真:アンズスタジオ)
「釜石市民ホール」では、ホール内の形態解析を行った(写真:アンズスタジオ)
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木の空間をつくるため、ロボットによる切削でLVL材を加工した。天井に張る突き板を厚さ0.18mmで削り出す技術を開発。メーカーによって製品化された(写真:アットロボティクス)
木の空間をつくるため、ロボットによる切削でLVL材を加工した。天井に張る突き板を厚さ0.18mmで削り出す技術を開発。メーカーによって製品化された(写真:アットロボティクス)
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 ホールの中に、どのような反響板があれば良い音環境になるかを、アンズスタジオで解析して形状を求めていった。次の大きな課題が、複雑な形状の施工方法だ。「木がくりぬかれた空間」というヨコミゾ氏のイメージに対し、壁のLVL材をロボットで切削する方法を提案した。ロボットのカスタマイズも自ら行う。ドイツ製のロボットにカッターを持たせNC(数値)制御で切り出した。

 そして、「ロボットは多能工化する」と確信した竹中氏は、アットロボティクス社を設立。自律制御型のロボミルという製品を開発し、販売もしている。この製品を使いこなす人材育成も導入先の企業研修として行う。

 「デジタル技術は、もっと自由なデザインを可能にする」と竹中氏は強調する。「技術的なサポートによって、社会貢献がしたい」と、ものづくりの技能革新に意欲を示す。

(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)
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たけなか つかさ:1971年生まれ。武蔵野美術大学建築学科修士課程修了後、同大学助手、講師を経て、2005~08年カナダ・ブリティッシュコロンビア大学建築学科大学院客員講師。09年岡部文氏とアンズスタジオを共同設立、16年アットロボティクス設立