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プロジェクトが複合・複雑化し、発注者は設計者に事業性まで踏み込んだ提案を期待している。最新技術を駆使しながら問題解決を図る、高度なプロ軍団にならなければ設計組織は生き残れない。

 竹中工務店の注目グループ──東京・大阪 
建て主の琴線に触れる設計提案
高付加価値で進化する「作品主義」

東京本店設計部 花岡グループ
東京本店設計部 花岡グループ
設計第2部門設計4(アドバンスト デザイン)グループ(人物写真:山田 愼二)
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デジタルを駆使した設計に挑む

 花岡グループは計6人。AI(人口知能)やビッグデータも活用しコンピュテーショナルデザインに取り組む。写真の千賀順(ちがすなお)氏は1981年生まれ。2006年東京都立大学大学院修了 市倉隆平(いちくらりゅうへい)氏は1989年生まれ。2012~13年Herzog & de Meuron Basel Ltd.勤務。15年東京大学大学院修了 ペンニーシー・フィアメッタ氏は1989年生まれ。2014年チューリッヒ工科大学卒業。16年東京大学大学院を修了

 2016年、竹中工務店東京本店設計部の花岡郁哉氏は、プロジェクトの主担当を担うグループ長に就いた。花岡グループは、従来の設計グループにはなかった新しいミッションを持つ。「設計部門として推進したかったコンピュテーショナルデザインに、先駆的に取り組むチームとして組織した」。同社東京本店設計部の濱野裕司設計部長はそう話す。

 そのため、花岡グループには、従来の部署名に即した「設計4グループ」に加えて、コンピュテーショナルデザインに取り組む「アドバンストデザイングループ」という名称が付けられた。このグループの特徴は、建築意匠だけでなく、環境デザインや建築生産、プログラミングなど、各分野のエキスパート数人のコンパクトなチーム編成にある。プロジェクトの初期段階から、分野を横断したメンバーが緊密に連携し、コンピュテーショナルデザインによる新しい設計手法を開拓していく体制だ。

新しい協業の成果を追求

 「ソフトを使って“建築の形”をつくるだけのコンピュテーショナルデザインではあまり意味がない。新しい協業から生まれるデザインや、クライアントに対する高い付加価値の提供を目指した」。花岡氏はグループの基本姿勢をそう説明する。

 異分野のエキスパートが組んだ花岡グループは、これまでに「ハナマルキみそ作り体験館」(17年)や、「EQ HOUSE」(19年)、「カンダホールディングス本社(同、日経アーキテクチュア19年7月11日号「無数の穴で西向きを克服」参照)などを完成させている。

 一見すると、華やかな意匠や、大胆な造形に気を取られがちだが、それらは各分野のエキスパートが協業したコンピュテーショナルデザインの成果だ。光環境や風環境、省エネ性能、居住環境、建設費、施工合理性、メンテナンス性などをトータルに検証して生まれた。

 2020年2月の完成を目指して施工中の「リバーホールディングス本社新築計画(仮称)」もその1つ。曲面状の壁で構成されるダイナミックな空間の広がる4階建てのオフィスビルだ。「技術的なことも含め、こうした有機的な形態を、社内外にどう説明するのか。そのとき、各種ソフトで検証した裏付けのあるコンピュテーショナルデザインが生きる」。2年前に花岡グループに加わった、同グループ課長の千賀順氏はそう話す。

 「プログラミングや環境解析のできるスタッフが隣にいる意味は大きい。他部署や社外に頼むのに比べて即応性が高く、高い頻度で検証できる」と、花岡氏もその意義を話す。

花岡 郁哉氏
花岡 郁哉氏
はなおか いくや:1975年生まれ。2001年東京大学大学院修士課程修了、竹中工務店入社。16年から東京本店設計部設計第2部門設計4(アドバンスト デザイン)グループ長。「池袋第一生命ビルディング」(14年)、「ミュウミュウ青山店」(実施設計、15年)、「日本海事検定協会本部ビル」(18年)などの設計を担当(人物写真:山田 愼二)