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ローコスト建築を追求

 こうした3人に加わったのが岩元真明氏。九大大学院環境設計グローバル・ハブが17年1月にできたのに合わせて、九大の助教になった。このハブは、土居氏が中心となって立ち上げた大学院内の組織。研究・教育を通して海外、特にアジア圏の環境整備に貢献するのが目的だ。

 岩元氏は、ベトナムのヴォ・チョン・ギア氏のパートナーとして事務所を切り盛りした後、日本に戻った。福岡で研究と設計を両立していきたいと考えた岩元氏にとって、グローバル・ハブは魅力的な職場だった。

 岩元氏は、グローバル・ハブの活動やカンボジアの近代建築史などの研究に取り組む一方、建築設計にも力を入れている。ローコストで廉価な建築に興味を持ち、ICADA(イカダ)として千種成顕氏と協働している。最近の成果は、1坪当たり22万円で完成した「節穴の家」だ〔写真4〕。

岩元 真明氏
〔写真4〕CLTの構成材を用いて坪22万円で住宅
〔写真4〕CLTの構成材を用いて坪22万円で住宅
2017年に広島県福山市に完成したアトリエ付き住宅「節穴の家」。岩元真明氏がICADAとして千種成顕氏と協働。CLTをつくる前の安価な集成板を利用、麻のロープと組み合わせて屋根を構成した。節が多いのを逆手に取り、直径25mmの穴を開けて光を取り込む。1坪当たり22万円で施工(写真:表 恒匡)
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 土居氏が約30年かけて築いた「言葉」の文化や、グローバルな活動の場は今後、これらの若手を中心に、さらに拡大していくだろう。

 キーパーソンの声  土居 義岳 建築史家、九州大学名誉教授
設計に「言葉」の文化を根付かせる

<b>どい よしたけ:</b>1956年生まれ。79年東京大学卒業。83~87年パリ留学。89年同大学大学院博士課程満期退学。90年同大学助手。92年九州芸術工科大学(現・九州大学)助教授、2003年教授。19年7月名誉教授(写真:日経アーキテクチュア)
どい よしたけ:1956年生まれ。79年東京大学卒業。83~87年パリ留学。89年同大学大学院博士課程満期退学。90年同大学助手。92年九州芸術工科大学(現・九州大学)助教授、2003年教授。19年7月名誉教授(写真:日経アーキテクチュア)

 私が1992年に九州芸術工科大学(現・九州大学)に着任した際、「福岡には建築を語る言葉がない」という同校出身の井本重美氏(IMOTO アーキテクツ)の働き掛けから、学生の意欲的な設計案について議論する「デザインレビュー」の立ち上げに尽力した。これは「せんだい卒業設計日本一決定戦」のモデルにもなった。

 九大の設計課題では「能力開発型」を志し、一辺25cmほどの立方体をどう分割するか私が出題。そのうえで非常勤講師に具体的なテーマを設定してもらい、機能や敷地などに適合させる方法を採った。手を動かしてリアルな設計を進め、そのなかで分析しながら空間の分割方法と結び付けて意味付けを行う。自分の設計を形式化し言葉で説明する能力を重んじた。(談)