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住宅・非住宅の区別はない

 高知に木造を設計できる設計者が多い要因として見逃せないのは、県や建築・林産関連団体などによるバックアップだ。今のように法制度が整備されていなかった20年以上前から、技術面を含め、木造を実現するための環境をつくってきた。全国に先駆けて2013年にCLT建築推進協議会を設立したのも高知県だ。

 同協議会では設計者向けの勉強会やセミナーなどを開いている。その勉強会から実際のプロジェクトを手掛けることになった設計者の1人に山﨑円氏がいる。地元の鈴江章宏、岩松正剛両氏と組んだ設計チーム「ふつう合班」で、CLTを用いた2階建ての準耐火木造「高知県森連会館」(16年)を設計した〔写真7〕。

山﨑 円氏
〔写真7〕CLT造の商業ビルが進行中
〔写真7〕CLT造の商業ビルが進行中
山﨑円氏が設計した木造建築。2018年に高知県越知町に完成した「スノーピークおち仁淀川キャンプフィールド」(設計:○ケンチクジムショ)
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2018年に高知県越知町に完成した「スノーピークおち仁淀川キャンプフィールド」(設計:○ケンチクジムショ)
2018年に高知県越知町に完成した「スノーピークおち仁淀川キャンプフィールド」(設計:○ケンチクジムショ)
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模型写真は、同県南国市で設計中の「大埇のテナント」(設計:風憬社)
模型写真は、同県南国市で設計中の「大埇のテナント」(設計:風憬社)
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CLTを用いた準耐火建築物の「高知県森連会館」(設計:ふつう合班)
CLTを用いた準耐火建築物の「高知県森連会館」(設計:ふつう合班)
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 山﨑氏が最初に勤めたのは、木造の実績の多い地元の細木建築研究所だった。そのため、「自分のなかでは住宅と非住宅の区別なく、普通に木造がある」と話す。最近、2棟の木造施設が完成。現在、設計中の民間テナントビルはCLT造だ。今年5月、活動の幅を広げるために、地元の設計者、梅原佑司氏と共同で風憬社を設立した。

 「木は変化する。そこを読む必要があるから設計も施工も面倒臭いけれど面白い」と横畠氏は言う。その言葉に平山氏はこう加える。「結局、僕らは『面白いことをみんなで一緒にやろう』という雰囲気のなかで建築をつくっている」

 ベテランの声  平山 昌信 艸建築工房会長
事務所の外でスキルを磨け

<b>ひらやま まさのぶ:</b>1952年高知県生まれ。75年大阪大学工学部建築工学科卒業、フジタ工業(現フジタ)入社。85年現代建築計画事務所(高知市)副所長。90年艸建築工房設立。2018年より現職。写真は1998年完成の「はりまや橋商店街木造アーケード」
ひらやま まさのぶ:1952年高知県生まれ。75年大阪大学工学部建築工学科卒業、フジタ工業(現フジタ)入社。85年現代建築計画事務所(高知市)副所長。90年艸建築工房設立。2018年より現職。写真は1998年完成の「はりまや橋商店街木造アーケード」

 10年ほど準大手建設会社に勤めた後、高知に戻って独立して初めて、私は木造を設計した。高知で驚いたのは、板金をはじめとする各職人の腕の良さだった。設計者では山本長水(ひさみ)さん、上田(あげた)堯世さんといったベテランが木造を設計していた。高知県人はオープンな気質で、仕事の情報やノウハウを囲い込まない。プロポーザルの情報が入れば仲間にも教えて、競い合ったり、一緒に組んで提案したりする。

 事務所のスタッフには、「事務所の外に出て、様々な活動に参加してスキルを磨け」と言ってきた。若手を育てるというよりも、育つ環境を与えてきたつもりだ。事務所に入って10年になる横畠にも教え込むことはせず、かなり任せてきた。彼はいろいろなチャレンジをしてくれるので頼もしい。最も元気がある30代後半から40代の時期にトップに立ってもらおうと考え、昨年、事務所の代表の座を譲った。(談)

■変更履歴
5ページ1枚目の写真中と6ページ本文1段落目で、東哲也氏と山﨑円氏の肩書を取締役に、6ページ1~3枚目の写真撮影者を川辺明伸氏に、同ページ本文最終段落で「山本長水さん」以降を「地元のベテラン構造設計者にも助言してもらった』」に、それぞれ訂正しました。[2019/08/02 14:30]