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「日本初上陸」ブランド相次ぐ

 ライフスタイル型ホテルとは、利用者それぞれの日常生活の延長線上で、宿泊はもちろん、食事をしたり仕事をしたり、イベントに参加して多様な人との交流を楽しんだりと、自由な過ごし方を受け入れる新しいタイプのホテルだ。

 グローバルチェーンのホテルブランドは旧来、世界各国どこで宿泊しても同等に提供される空間や設備、サービスを価値とし、価格帯ごとにそろえたラインナップ全体で顧客の囲い込みを進めてきた。

 しかし、近年、「高級ホテルのコモディティー化(一般化)が進んでいるという危機意識から、グローバルチェーンは、新しいブランドの開発の仕方を進化させてきた。強烈な個性で勝負する独立系ホテルに対抗するため、細やかな顧客ニーズ対応を始めている」。こう話すのは、グローバルチェーンのプロジェクトなどにPM(プロジェクトマネージャー)として関わってきた日建設計ソリューショングループプリンシパルの中谷憲一郎執行役員だ。

 こうした世界のトレンドを受け、グローバルチェーンが展開するライフスタイル型ホテルを国内のデベロッパーが「日本初上陸」させる開発事例が目立つ〔図2〕。

〔図2〕グローバルチェーンは新需要に応えるライフスタイル型をラインナップ
〔図2〕グローバルチェーンは新需要に応えるライフスタイル型をラインナップ
グローバルチェーンのブランド分類とライフスタイル型の位置付け。赤字は本特集で触れたブランド。RevPAR(販売可能な客室1室当たりの売り上げ=宿泊部門の室料売り上げ÷客室総数、16年米国実績)を見ると、同水準カテゴリーの従来ブランドよりもライフスタイル型の方が高収益になっていると分かる(赤枠)(資料:ホーワスHTL)
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 日本にいち早くライフスタイル型を“輸入”したのは森ビルグループだ。ハイアット ホテルズ コーポレーションが展開する「アンダーズ」を虎ノ門ヒルズに誘致。世界12軒目として、14年に「アンダーズ 東京」が開業した。

 ジョーンズ ラング ラサール執行役員の沢柳知彦・ホテルズ&ホスピタリティ事業部長は、アンダーズについて、こう話す。「格式張らないフレンドリーな雰囲気を持つが、客室単価は、都内の有力な高級ホテルを上回る。格式の高さや価格軸によるグレード感などにかかわらず、居心地が良ければ喜んで高い金額を払うという層は確実に存在する」。

 同等クラスの従来ホテルと比較して、ライフスタイル型とした方が高収益を見込めるという先例を示したアンダーズ以降、追随する動きが相次いでいる(「個性化」で攻める」参照)。

 例えば、森トラストは20年に東京・虎ノ門、21年に同銀座に「エディション」を開業させる。マリオット・インターナショナルが、独立系のプロデューサーとして1980年代から先進的なホテルをつくり続けてきたイアン・シュレーガー氏とタッグを組んで開発したブランドだ(「個人のセンスで勝負できる醍醐味」、「地域経済の循環を生む」に関連記事)。

 さらに、若い世代をターゲットにしたライフスタイル型もそれに続く。17年に東京・錦糸町、大阪・本町で同時開業した「モクシ―」や18年に開業した「ハイアット セントリック 銀座 東京」はいずれも、主なターゲットはミレニアル世代だ。20年にかけては「インディゴ」や「アロフト」なども開業を控える。

 こうした動きを、CBREの土屋ディレクターは、次のように見る。「近年の日本の不動産投資環境の中で、ホテルは成長分野になっている。付加価値の高さで勝負するライフスタイル型ホテルに対し、投資対象として着目する動きが現れている」

 また、グローバルチェーンが求めるMC(運営委託)型の契約を、国内デベロッパーが敬遠しなくなったことも、海外ブランドの進出を後押ししている。「事業収入の安定する賃貸型でなくてもリスクコントロールは可能だとデベロッパー側が認識し始めた」とジョーンズ ラング ラサールの沢柳氏は分析する。