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地域の個性を世界にアピール

 ホテルの多様性に関心が寄せられるのは、インバウンド増加の勢いを維持するためには重要なインフラだと理解されているからだ。

 人口減少などで日本人国内旅行の宿泊需要(延べ宿泊者数)は頭打ちと推定される中で、18年の外国人宿泊者数は5年前と比較して約2.8倍〔図3〕。同年の訪日外国人数は過去最高の3100万人を突破した。ラグビーワールドカップや20年東京五輪などを弾みに、政府が目標とする20年4000万人の達成も近い。

〔図3〕宿泊需要はインバウンドがけん引
〔図3〕宿泊需要はインバウンドがけん引
日本人、外国人それぞれの延べ宿泊者数の推移(従業員10人以上の宿泊施設の実績)。2020年、30年の数字は人口などを反映させた推計値(資料:観光庁「旅行・観光消費動向調査」「訪日外国人消費動向調査」、CBRE)
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 しかし、今後「観光先進国」へと飛躍するためには、課題もある。日本では、富裕層が志向する4つ星、5つ星といわれる高価格帯のホテルの不足が指摘されている。また、インバウンドの家族客向けに需要のある、長期滞在型のサービスアパートメントなども、足りないとされる。

 リピート客増加などインバウンドの成熟化が起こる中で、「今後は単純な訪日外国人数よりも、滞在日数や旅行消費額が観光産業の成長を図る際の指標になる」とジョーンズ ラング ラサールの沢柳氏は話す〔図4〕。

  2013年 2018年 2020年 2030年
訪日外国人数 1036万人 3119万人 4000万人 6000万人
地方部の外国人延べ宿泊者
※( )内は三大都市圏
1186万人泊(2164万人) 3848万人泊(5580万人) 7000万人泊 1億3000万人泊
訪日者の旅行消費額 1兆4167億円 4兆5189億円 8兆円 15兆円
日本人の国内旅行消費額
※( )内は宿泊旅行
20兆1871億円(15兆4100億円) 20兆4834億円(15兆8040億円) 21兆円 22兆円
〔図4〕旅行消費額が新たな指標に
「観光先進国」の実現に向け、政府が掲げる目標値。訪日外国人数は2018年に過去最高人数を達成。訪日客の旅行消費額は目標値との差が大きい(資料:日本政府観光局「訪日外客数の動向」観光庁「旅行・観光消費動向調査」「訪日外国人消費動向調査」)

 日本が世界から選ばれる滞在地となるためには、玄関口である主要都市だけでなく、地方にも“目的地”を広げていく必要がある。

 ホテルの個性化が進む中で、改めて見直されているのは、地域の特色をどう読み解くか。日建設計の中谷執行役員は、「地方都市に展開されるホテルでは、より微細に差別化しようとする傾向が強まっている。それによって、日本人デザイナーの活躍の場が増えるはずだ」と見る。