星野リゾートの手掛けるホテルブランドのうち、多世代の家族連れやグループでの利用を主なターゲットにした「リゾナーレ」。4つ目となる施設が11月に開業する。体験型リゾートとして、農と食をテーマに選んだ。
栃木県の那須高原で約30年間運営されきた高級リゾートホテル「二期倶楽部」の所有権を、星野リゾートが取得。クライン ダイサム アーキテクツ(以下KDa)を起用し、付帯施設の新築や、客室、レストランの改装などを進めている〔図1、2〕。
星野リゾートが同施設のリノベーションを模索する中で着目したのは、付近では農業が盛んで、農業体験の受け入れに前向きな生産者が存在する点だった。当初は「収穫体験」を宿泊者の目的の1つに取り入れるイメージを持ち、KDaも加えて施設コンセプトの検討に入った。
地域とのコミュニケーションを通して分かってきたのは、生産者が農業の仕事を広く知ってほしいと考えても、収穫期に体験希望者が集中すると疲弊して長続きしないという課題だった。一方、ホテルの側も、収穫という一時期に偏らずに通年で展開できるテーマを見つける必要があった。
リサーチの末、「食というテーマも組み合わせて四季それぞれのプログラムを用意し、これに地域の生産者とのネットワークを生かしていこうと決めた。収穫期以外の農作業なども知ってもらう機会を設ける」とリゾナーレ那須の中瀬勝之総支配人は語る。元から敷地内にあった畑や温室も活用し、イタリアなどに事例がある「アグリツーリズモ」(農業観光)をコンセプトとするホテルとして運営する方針を固めた。