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建築分野のデジタル活用(デジカツ)を伝える連載を、ウェブ媒体「日経クロステック」に毎週掲載している。リポーターは川又英紀デスク。第56回は東急建設が日本ERIとMR(複合現実)を使い、建築物の完了検査ができるか試した話をした。

■「ちょい読み」版とは
日経クロステック有料会員向けの連載「川又Dが行く!建築デジカツ最前線」の一部を日経アーキテクチュア読者向けにお届けするのが「ちょい読み」版だ。日経クロステックでは、詳細な情報をスピーディーに提供中

 「あの垂れ壁が建築確認を下ろした図面通りになっているか、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データを参照しながらチェックします」

 確認検査機関である日本ERI(東京都港区)の担当者が天井の垂れ壁を見上げながら、現物に近づいていく〔写真1〕。頭には、日本マイクロソフトのMR機「HoloLens 2(ホロレンズ 2)」をかぶっている。検査担当者はHoloLens 2のレンズ越しに、実際の垂れ壁と、そこに重ねて表示されているBIMデータを見ている。

〔写真1〕MRで完了検査ができるか検証
〔写真1〕MRで完了検査ができるか検証
HoloLens 2をかぶり、天井の透明な垂れ壁に近づく日本ERIの検査担当者
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HoloLens 2で垂れ壁を見ると、BIMデータが重ねて表示される(写真:日経クロステック、資料:東急建設)
HoloLens 2で垂れ壁を見ると、BIMデータが重ねて表示される(写真:日経クロステック、資料:東急建設)
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MRでの完了検査を初体験

 完了検査は通常、紙の設計図などを見ながら実施する。だがこの日は近い将来現実になるかもしれないBIMとMRを使った完了検査に向けた実験をした。検査担当者は初体験だ。

 主催したのは東急建設。この建築物は同社が日本ERIから、本当の完了検査を受け終わったところだ。

 東急建設は建築確認のときに提出した設計図の基になっているBIMデータを、HoloLens 2に入力。担当者がMRを見て完了検査をする状況を再現した。

 例えば、窓サッシの寸法が図面に記された長さと合っているかを確認する場合〔写真2〕。検査担当者が窓に近づき、MRで対象の窓を選ぶと、床面に寸法が仮想表示される。

〔写真2〕MRで寸法を仮想表示
〔写真2〕MRで寸法を仮想表示
窓サッシの寸法が建築確認を下ろした図面通りになっているかを、検査担当者が調べているところ
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レンズ越しに見ると、床にサッシの寸法が表示されている(写真:日経クロステック、資料:東急建設)
レンズ越しに見ると、床にサッシの寸法が表示されている(写真:日経クロステック、資料:東急建設)
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 今回はあくまでも体験会である。実際にMRを使うようになるには、完了検査に必要な建築確認済みのBIMデータを、確認検査機関が用意しなければならない。つまり、BIMデータを使った建築確認の実現が、先にありきである。

 いずれにしろ、検査する側とされる側が協力し、BIM活用の経験を今から積んでおかなければならない。