全1030文字

建築分野のデジタル活用(デジカツ)を伝える連載を、ウェブ媒体「日経クロステック」に毎週掲載している。リポーターは日経アーキテクチュア・川又英紀デスク。第42回は、「三角広場」の設計で、VR(仮想現実)を関係者間の合意形成に役立てた話を紹介した。

■「ちょい読み」版とは
日経クロステック有料会員向けの連載「川又Dが行く!建築デジカツ最前線」の一部を日経アーキテクチュア読者向けにお届けするのが「ちょい読み」版だ。日経クロステックでは、詳細な情報をスピーディーに提供中

 屋根と外壁がガラスで覆われ、梁などの鉄骨が丸見えな施設。内部の床面から、全体はどう見えるのか。

 東京・西新宿にある新宿住友ビルの低層部に2020年7月、ガラスの大屋根が架かる「三角広場」が開業した。約3250m2ある無柱のアトリウムは、最大2000人を収容できる。

 この形に至るまで、設計は修正の連続だった。基本・実施設計を担当した日建設計は事業主体の住友不動産に、何度もプランを提示。完成イメージを共有することに努めた。

 ガラス屋根のすぐ下に、50mスパンの白い梁(ロングテーパービーム)が並ぶ。ガラス屋根を架けたのに、梁が視界を遮らないか。できれば実空間に近い大きさで見え方を確認し、設計の方向性を固めたいところだ。

ゴーグルなしで同時鑑賞

 日建設計は住友不動産の関係者を連れて、東京・汐留にあるパナソニックの「サイバードーム」に向かった〔写真1〕。ドームには内径8.5mの球面ディスプレーがある。ゴーグルをかぶらず、全員で同じVR画像を見ながら意見交換できる場所だ。「合意形成や意思決定がしやすかった」(日建設計設計技術センターダイレクター ファサードエンジニアの村上博昭氏)。出来上がりは、VRで見たものに限りなく近くなった〔写真2〕。

〔写真1〕広場からガラス屋根を見上げた状態を仮想体験
〔写真1〕広場からガラス屋根を見上げた状態を仮想体験
パナソニックの「サイバードーム」に、三角広場のVR画像を映したときの様子(写真:日建設計)
[画像のクリックで拡大表示]
〔写真2〕完成した広場はVRで見たものにかなり近い
〔写真2〕完成した広場はVRで見たものにかなり近い
三角広場からは青空が見え、床には梁やガラスフレームが影を落とす(写真:日建設計)
[画像のクリックで拡大表示]

 25m近い高さに取り付けた梁は、広場から見上げるとそれほど大きく見えない。だが梁は一番深いところで、デプスが1.8mある〔写真3〕。そんな梁が並んだら、ガラス屋根が梁で隠れて、外が見えにくくならないか、心配になるだろう。

〔写真3〕大きな梁を現しにしたガラス屋根
〔写真3〕大きな梁を現しにしたガラス屋根
梁のデプス(上弦材と下弦材の間隔)は最大1.8mある。設計段階で空の見え具合を検証した(写真:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]

 住友不動産がこだわったのは、青空を最大限見えるようにすることだ。広場から見上げたイメージを実物大で確かめておきたい。サイバードームの出番というわけだ。

最近の掲載記事(日経クロステック)