CLT(直交集成板)を用いた事例が急増している。ポイントは、いかにCLTの特性を引き出すかだ。2方向の力を負担しながら大きな面として屋根に活用、同じ部材を繰り返し利用するなど、方向性が見えてきた。
幅2mのCLTパネルを並べて接合し、1枚の大きな板として屋根面を構成。2方向の水平力を負担するCLTと、ロの字プランの特性を生かして折板(せつばん)構造を成立させた。「梁・桁なし」の屋根架構が広々とした空間を生む。
香南市総合子育て支援センター「にこなん」は、ロの字の平面形に、CLTで切妻形の屋根を架けている〔写真1、2〕。CLTのパネルは5層、厚さ150mmを使用。幅2m、長さは最大6mに加工して屋根面に並べ、一体に接合することで折板構造が成立し、中庭側はロの字に閉じてスラスト(斜め下方への横圧力)を抑制する。周囲の壁は在来軸組み工法で、CLTのパネル幅に合わせて柱が立つ。
この建物ではCLTが桁・登り梁・屋根下地・天井仕上げを兼ねている。梁・桁は耐力壁部分にしかない。2018年の法改正によって、CLTの2方向性を生かした構造計画が5層でも可能になった。この建物はそれを前提に設計を進め、「梁・桁なし」の架構を実現。設計を手掛けた艸(そう)建築工房(高知市)の横畠康代表は、「CLTを使うからこそ実現できる建物にしたかった」と話す。
5層のCLTパネルを使ったのは、内装制限がある児童福祉施設で、木材の現し空間にするためだ。延べ面積は500m2に満たないが、準耐火建築物とし、燃えしろ設計を行った。