今春、ノルウェーに世界一高い木造建築が完成した。国内では、高さ50mを超える計画も明らかになった。CSR(企業の社会的責任)による環境配慮、木質空間の持つ効果などから、都市部の計画は増えそうだ。
日本をはじめ、世界中から視察者が押し寄せる高層木造ビルが北欧にある。オフィスやホテル、短期滞在用アパートなどから成る「ミョーストーネット」だ。フォトジャーナリストの武藤聖一氏が現地をリポートする。
ノルウェーの首都オスロから北へ約140km、ブルムンダルという町に世界一高い木造複合ビル「ミョーストーネット」が完成し、世界中から数千人もが視察に訪れている。建物は18階建て、高さ約85.4m。総工費5000万ユーロ(約61億円)をかけて19年3月に竣工した〔写真1〕。
敷地は、ノルウェー最大のミョーサ湖に隣接している。事業者は、ブルムンダル出身のアーサー・ブチャート氏とその子息が経営するAB Invest A/S。設計は、ノルウェー・トロンハイムに拠点を持つヴォル・アーキテクターが手掛けた。
ブチャート氏は、地元の素材や生産者、企業を使って、世界一高い木造ビルをつくりたいと願った。主な木材は、近隣の森から持ち込んだ。約1400m3の構造用集成材は、敷地から約15kmの距離にあるモエルフェン・リムトレ社の工場で加工した。そのほか、エレベーターや階段のシャフトにCLT(直交集成板)、床の一部にLVL(単板積層材)を使用した。