教育空間における「開放」や「交流」の在り方が、より社会性を帯びたものに変わりつつある。「教育施設は重要な地域拠点」という認識も広まってきた。多様な存在を認め合う場所の実現には、建築的な仕掛けが鍵となる。学びの場にそうした現代的な性格を持たせた最新の事例を追う。

特集
開き・交わる学校建築
多様な出会いの空間で、地域拠点の役割果たす
目次
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フリーアドレス空間で「教職協働」を推進
梅光学院大学 The Learning Station CROSSLIGHT
「The Learning Station CROSSLIGHT」には教室と廊下の区別がない。授業が行われている傍らを、他の学生や教員が突っ切っていく。教員と職員のオフィスをフリーアドレス制としているのも特徴だ。
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吹き抜けの小部屋が身近な出会いを促す
神奈川大学 栗田谷アカデメイア
イベント型の交流よりも、日常生活の中での出会いから生まれるコミュニケーションが大切──。神奈川大学の新しい寮では、多国籍の学生たちが出会って交流できる様々な場を、建物の各所に用意した。
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緩やかな階段を軸に都市型の高層モデル
北区立田端中学校
敷地面積に制約のある都市部に、学年間で交流できる教育効果の高い環境をどう実現するか。緩やかな中央階段を軸とする、立体的な空間構成によってプロトタイプを目指す校舎が東京都北区の住宅街に現れた。
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複数の中庭型広場で広い敷地に性格付け
広島県立広島叡智学園中学校・高等学校
中高一貫校の新設に当たり、様々な活動の中心となる大型の広場を整備し、さらに学校生活に見合うサイズの複数の中庭と諸機能をセットにして配置。広大な敷地における場所の性格付けと、交流機会の創出を図った。
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既存樹を中心に配置 合築施設で世代交流
杉並たかいどいちご保育園・グループホームたかいどの里
元気な子どもたちの姿を高齢者が日常的に目にすることができるのは、合築施設ならではの魅力だ。世代交流の実現を願う長崎の社会福祉法人が、東京に完成させた。施設内の各所に出会いを誘発する動線を設けている。
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多様な利用者つなぐ仕掛けが鍵
教育施設はその地域にとって重要な拠点だ。世代を越える交流の場の、核となり得るポテンシャルがある。多様な人々、多様な諸機能を受け入れながら、今後ますます発展する可能性がある。そのポイントを整理してみよう。