敷地面積に制約のある都市部に、学年間で交流できる教育効果の高い環境をどう実現するか。緩やかな中央階段を軸とする、立体的な空間構成によってプロトタイプを目指す校舎が東京都北区の住宅街に現れた。
「都市型の高層校舎のプロトタイプを目指した」。面積約7200m2の限られた敷地を生かし切るプランニングに関し、設計を担当したシーラカンスK&H(東京都杉並区)の堀場弘代表取締役(共同)はこう語る。
東京都北区田端に立つ、約250人の生徒が通う中学校校舎だ。学校再編後の適正配置を図る北区が旧小学校跡地を選び、新築事業を進めた。グラウンドの広さの確保のため、縦方向に諸室を積み上げるしか選択肢はなかった。
各階・各室が分断されないよう、地上8階建ての校舎棟の中央に、オープンスペースと一体になりながら上下を結ぶ緩やかな階段を配置した。踏面360mm、蹴上げ146mmの緩勾配の階段で、各階2方向からアクセスし、踊り場で交差する格好としている〔写真1〕。
「上下の学年がうまく交じり合ってほしいと常に考えている。これまで階段教室などのためにスタディーを重ねてきた経験があるので、階段の傾斜を緩くする効果は心得ていた」とシーラカンスK&Hの工藤和美代表取締役(共同)は説明する。