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近年の建設需要の高まりを受け、受注が好調な建設会社や大手設計事務所に対し、小規模な設計事務所の受注は伸び悩んでいる。給与や待遇面でも厳しい実態が明らかになった。

 事務所運営 
建設ラッシュと無縁の台所事情

 事務所主宰者(役員を含む)を対象に日経アーキテクチュアが実施した独自調査で、事務所運営に不安を感じている主宰者が8割強に上ることが分かった。

 不安の要因として上位に入ったのは、「受注の先行き」や「受注数や売り上げの減少」だ。小規模な設計事務所が、近年の建設ラッシュとは無縁の状況にあることが明らかになった〔図1〕。

〔図1〕事務所主宰者が不安を感じる要因(複数回答)
〔図1〕事務所主宰者が不安を感じる要因(複数回答)
事務所運営について不安を感じていると回答した主宰者に、その要因を聞いた。上位には、受注や売り上げに関する項目が入った。以降は、設計手間の増大や人手不足など、具体的な悩みが続いた
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 自由回答では、「申請作業が多岐にわたり、本来の創作作業に充てる時間が減った」「受注や売り上げ確保のために対策を取ろうにも、その時間の確保がままならない」といった答えが並ぶ。主宰者自身が時間に追われているのが実態だ。

 多くの主宰者が不安に感じている受注について、事務所全体の年間設計件数の増減を尋ねた。2017年と18年を比較して「増加」が約32%にとどまり、「変わらない」と「減少」を合わせると約70%に及んだ〔図2〕。

〔図2〕年間設計件数の増減(2017年比)
〔図2〕年間設計件数の増減(2017年比)
2018年に事務所全体で手掛けた設計件数は、17年と比べて「変わらない」が最多。「増えた」と回答した事務所と「減った」と回答した事務所がほぼ同じ割合だった
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 進行中のプロジェクト件数については、「1~2件」が最も多く32.8%。「3~4件」が28.4%、「5~9件」が24%と続く。20件以上を同時進行する事務所も5.4%あった〔図3〕。

〔図3〕進行中のプロジェクト件数
〔図3〕進行中のプロジェクト件数
調査時点で何件のプaロジェクトを受注・同時進行しているかを聞いた。「1~2件」が最も多く、全体を見ても4件以下が6割を超えた
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新築以外にも収益源を拡大

 新築住宅市場の縮小などを受け、設計事務所の業務内容の多様化も顕著だ。調査では、「住宅の新築設計以外の業務でも収益を上げている」と回答した設計事務所は、82.4%に上った。

 具体的には改修の設計が最も多く、そのほかに建築確認申請の支援やデザイン監修、検査、コンサルティング、一般消費者向けの住宅診断など、内容は多岐にわたる〔図4〕。

〔図4〕新築戸建て住宅の設計以外の業務内容(複数回答)
〔図4〕新築戸建て住宅の設計以外の業務内容(複数回答)
住宅の新築設計以外でも収益を得ていると回答した主宰者に、その業務内容を聞いた。新築住宅市場の縮小などから、新築設計以外の収益源を確保しなくてはならない実情が分かる
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 自由回答では、「建設会社の下請けを行っている」「設備・構造の協力事務所を複数確保して、意匠だけでなく設計全般に対応できる体制づくりを強化し始めた」「発注者の要望から、新しい仕事を発掘・創造していくことを考えている」といった意見があった。

 設計件数や業務内容と密接に関係する残業時間は、ばらついている。事務所全体の1カ月当たりの平均で「20時間未満」と回答した主宰者が最多で約4割を占めた。「40時間未満」と「60時間未満」はいずれも23.5%だった。約6%の事務所が「80時間以上」と回答した〔図5〕。

〔図5〕1カ月当たりの平均残業(時間外労働)時間
〔図5〕1カ月当たりの平均残業(時間外労働)時間
事務所全体の1カ月当たりの平均残業(時間外労働)時間を聞いた。「20時間未満」の事務所が最多ながら、「80時間以上」まで、事務所によって大きく差が出た
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