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政府は旅館業法や文化財保護法を改正し、歴史的建築物の活用に向けて大きくかじを切った。そうした追い風を受け、戦前の民家をビジネスとして活用する機運が高まりつつある。ハードルは建築基準法をどうクリアするかだ。

 少子高齢化の進行や都市部への人口集中により空き家が増加し、社会問題になっている。総務省の住宅・土地統計調査によると2018年には、総住宅数約6246万戸に対して、空き家数が約845万戸だった〔図1〕。率にして13.6%、7戸に1戸が空き家ということになる。

〔図1〕空き家数は年々増加
〔図1〕空き家数は年々増加
総務省の住宅・土地統計調査によると、2018年の空き家数は845万戸。総住宅数に対する空き家の割合は13.6%で、過去最高となった(資料:総務省)
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 空き家が増加し続ける一方で、減少しているのが「古民家」だ。古民家は法律で定義されていないが、本特集では便宜的に、建築基準法が施行された1950年以前に建てられた木造住宅を古民家とする。

 その定義で総務省の住宅・土地統計調査を見てみると2018年時点で現存する古民家は約101万棟。13年の時点と比較すると5年間で約26万棟もの古民家が解体されたことが分かる〔図2〕。

〔図2〕古民家は減る傾向にある
〔図2〕古民家は減る傾向にある
住宅・土地統計調査によると、建築基準法が施行される1950年以前に建てられた木造住宅で、2018年時点で現存するものは101万棟。13年の調査結果と比較すると、5年間で27万棟もの古民家が解体された(資料:総務省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 古民家の解体が進む原因として、建基法への適合が困難な点が挙げられる。耐震性や防火安全性を現行法規に適合させようとすると、莫大なコストがかかってしまうため、所有者が建物の存続を断念して解体するケースが多い。

古民家活用の機運が高まる

 古民家が年々減少を続けるという調査結果の一方で、古民家を地域資源と捉え、飲食店や宿泊施設などに転用する企業の動きが目立つ。

 日本政策投資銀行は15年に発表したリポート「古民家の活用に伴う経済的価値創出がもたらす地域活性化」の中で、古民家(1950年以前に建設された木造住宅)再生の潜在的市場規模は約1.8兆円と試算。15年には古民家再生に向けた調査や人材育成などを行う「全国古民家再生協会」が設立された。

 古民家再生ビジネスには、積水ハウスや大和ハウス工業といった大手住宅会社が参入。近年では、JR西日本やワコール、地方銀行といった様々な業種の企業が古民家を活用した宿泊事業などに参入し、活況を呈している。

 こうした動きを後押しするため、政府は18年に旅館業法、19年に文化財保護法と建基法を改正。地域における文化財や古民家の活用促進を図った。国土交通省も18年、自治体向けに、歴史的建築物の活用時に建基法の適用を除外できる条例を整備するためのガイドラインを作成した。