接道条件を満たさず、再建築不可の路地状敷地に立つ6戸の長屋を1戸の住宅に再生した。大規模修繕に該当しない範囲に工事をとどめて、既存不適格のまま間取り変更や構造補強を行った。
町家などの伝統的な建築物が立ち並ぶ街路には、建築基準法上の「道路」に2m以上接していない路地状敷地や、無接道敷地に建物が立っていることが多い。建基法では、接道条件を満たしていないこれらの敷地での建築行為を認めておらず、建物の建て替えや増改築ができない。
そんな再建築不可の敷地に立つ3棟6戸の長屋を改修して、1戸の住宅に再生したのが「頭町(かしらちょう)の長屋群」だ〔写真1〕。
長屋が建てられたのは約100年前。土地と建物を所有するいえ屋とトップエステート(いずれも京都市)からの依頼を受けて、設計を手掛けた魚谷繁礼建築研究所(京都市)の魚谷繁礼代表は、「腐朽が激しく、今にも崩れそうな部分もあった」と当時を振り返る〔写真2〕。
4号建築物で用途変更を伴わないので、通常であれば大規模修繕・模様替えに該当する工事を行っても確認申請が不要だ(資料参照)。しかし、頭町の長屋群の敷地は、「道路」にわずか0.98mしか接していない再建築不可の敷地のため、大規模修繕・模様替えはそもそも認められない。建築確認が不要だからといって、これを勝手に行うと「違反建築物」になってしまう〔写真3〕。
そのため、大規模修繕・模様替えに該当しない範囲の工事にとどめ、既存不適格を継続するしか選択肢がなかった。