全2856文字
2019年の文化財保護法改正により注目される歴史的建築物の「建築基準法適用除外」。京都市は適用除外条例の制定に加え、「京町家できること集」を作成。やどまち西陣はこれを参照して、町家を旅館兼住宅に転用した。
築107年。かつては職人の下宿として活用され、呉服屋、住宅と用途を変えてきた町家が、旅館兼住宅の「やどまち西陣」として生まれ変わった〔写真1〕。京都市の主要道路の1つである今出川通に面し、両側をマンションに挟まれて立つ〔写真2〕。
〔写真1〕通り土間を旅館の共用部に
既存の古い軸組みを現しにした通り土間が、旅館の共用部になっている。2階客室への階段(写真左)下の壁を一部くぼませて、中に本棚を造り付けてライブラリーとした。その並び奥に1階客室の入り口がある(写真:石川 耕平)
[画像のクリックで拡大表示]
上:改修後1階平面図。1階は母屋の西側約3分の1を持ち主の住宅(グレー部)、残りを旅館に改修した。通り土間の上に架けられていた床を撤去して吹き抜けを復元。旅館の階段2つは架け替えて現行法規に合わせた。下:改修前1階平面図。昭和中期に行われた増築により、床面積は容積率をオーバーしていた。通り土間にも一部床が張られてキッチンが設置されていたほか、中庭に面した水回りの上に物干し場がつくられるなどしていた
[画像のクリックで拡大表示]
〔写真2〕防火地域に立つ大正元年築の町家
下宿から店舗併用住宅、専用住宅と変遷してきた。今回の計画では住宅と旅館を併用するため既存の玄関を旅館のエントランス(写真左)とし、新たに住居の玄関を設けた。1階はアルミ格子を木格子に変更。2階外壁は手を加えていない(写真:石川 耕平)
[画像のクリックで拡大表示]
現在の持ち主の祖父が1963年に町家を購入し、東側の通り土間の吹き抜けを塞いで増床。新建材などを用いて店舗併用住宅に転用した。
2002年には商売をたたんで専用住宅としたが、延べ面積330m2を超える建物は、一家族で住み、維持していくには広過ぎた。
町家としての継承を望んだ持ち主は、町家再生事業を手掛ける企画会社ワンブロック(京都市)に相談。旅館兼住宅への転用に踏み切った。延べ面積の約3分の2に当たる約213m2を事業者に貸して旅館とし、残る部分に持ち主が住む計画だ。