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2019年9月、世界平和記念聖堂の耐震補強・補修工事が終わった。外観を見ても補強や補修の跡は分からない。国の重要文化財に指定されているため、既存の意匠が変わらない補強・補修方法を取り入れた。

 村野藤吾(1891~1984年)が設計したカトリック幟町(のぼりちょう)教会の世界平和記念聖堂は、広島に原子爆弾が投下された9年後の1954年8月6月に竣工した〔写真1〕。

〔写真1〕被爆から復興する広島のシンボル
〔写真1〕被爆から復興する広島のシンボル
完成当時の空撮。戦災復興が進む街中でひときわ大きいシンボリックな存在だった(写真:カトリック幟町教会)
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耐震補強・補修工事を終えた現在の西側外観。工事前との違いは全く分からない(写真:生田 将人)
耐震補強・補修工事を終えた現在の西側外観。工事前との違いは全く分からない(写真:生田 将人)
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 建物は、鉄筋コンクリート(RC)造・地上3階建ての「聖堂」と、高さ46.5mの「鐘塔」から成る。村野藤吾の代表作の1つであることに加え、歴史的意義などが評価され、2006年7月に国の重要文化財に指定された。

 重文指定後、保存のための改修を検討してきた教会は、16年から3年にわたり耐震補強・補修工事を実施した。完成以来、耐震補強は初めて。補修は1981年と2001年に次いで3度目となる〔写真24〕。

〔写真2〕銅板の大屋根はふき直し
〔写真2〕銅板の大屋根はふき直し
東側から見た全景。国指定の重要文化財なので、既存の意匠を守るように耐震補強・補修工事を実施した。銅板の大屋根は、下地の防水を含めてふき直した一方、ドーム部分などは既存屋根に新しい銅板屋根を載せるカバー工法を採用した(写真:生田 将人)
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〔写真3〕ブロックを外して躯体に防水処理
〔写真3〕ブロックを外して躯体に防水処理
室内の開口部まわりに雨漏りによる染みがあったため、梁上にある外壁のモルタルブロックを一部撤去して、内側のコンクリート躯体に防水処理を施した。そのため一部のブロックは再現したものに変わっている。外壁は、仕上げブロックと躯体の間に隙間を設けた二重構造(写真:生田 将人)
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〔写真4〕劣化部分を補修
〔写真4〕劣化部分を補修
「ひる石モルタル」と呼ばれる塗り壁仕上げをはじめ、コンクリート壁や人造研ぎ出し床、木毛セメント板の天井など、聖堂の内外で数多くの補修を実施した。聖堂の天井高は18m(写真:生田 将人)
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