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民間の事業主がモダニズム建築の再生に取り組む例が増えてきた。「保存」重視の公共とは対照的に、民間は「活用」重視。ここでは3つの民間事例を見る。
一時は存廃の議論に揺れた坂倉準三の代表作が、全面的な改修を経て生まれ変わった。65年間に多くの改修を重ねた建物に対して、オリジナルの「再生」と、将来にわたる「持続可能性」が折り合う着地点を模索した。
2019年6月、鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムがオープンした。坂倉準三(1901~69年)の設計で1951年に完成、2016年3月に閉館した神奈川県立近代美術館旧鎌倉館本館(以下、旧館)を全面的に改修した〔写真1、2〕。
旧館は、坂倉準三の代表作として広く知られる。戦後モダニズム建築の先べんを付けたことにとどまらず、国内初の公立近代美術館として戦後文化をリードするなど、文化的・歴史的な意義が認められてきた。そうした価値に基づき、16年11月に神奈川県の重要文化財に指定された。同県の重文指定を受けた建造物の中で唯一の戦後モダニズム建築だ。
16年3月の閉館は、同県と土地所有者の鶴岡八幡宮との65年間の土地賃貸借契約の満了に伴うもの。同年12月、旧館は鶴岡八幡宮に無償譲渡された。なお、同じ坂倉準三の設計で1961年に増築された新館は、閉館後まもなく解体されている。