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東京五輪の開催で、華々しい1年となるはずだった2020年。新型コロナウイルスの出現で五輪はあえなく延期となり、建築界は工事中断などの対応に翻弄された。コロナ禍で社会が混乱するなか、「令和2年7月豪雨」による水害などで80人超が亡くなった。感染症や気候変動など、地球規模の問題の陰に隠れてしまったものの、改正建築士法や改正民法の施行で、建築ビジネスのルールが大きく変わる節目の年でもあった。日経アーキテクチュアが選んだ「2020年の建築界10大ニュース」で、1年間の主な出来事を振り返る。(日経アーキテクチュア)

news1 コロナ禍で工事中断、五輪は延期
建築のニューノーマルを探る動きが続々

4月7日に政府が発令した緊急事態宣言を受けて、建設会社は工事を一時中断した。写真は都内の再開発の現場(写真:日経アーキテクチュア)
4月7日に政府が発令した緊急事態宣言を受けて、建設会社は工事を一時中断した。写真は都内の再開発の現場(写真:日経アーキテクチュア)
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緊急事態宣言発令の翌日、4月8日のJR東京駅前は閑散としていた。手前は東京五輪のカウントダウン時計。3月24日に2021年夏への大会延期が決まり、カウントダウンはやり直しとなった(写真:日経アーキテクチュア)
緊急事態宣言発令の翌日、4月8日のJR東京駅前は閑散としていた。手前は東京五輪のカウントダウン時計。3月24日に2021年夏への大会延期が決まり、カウントダウンはやり直しとなった(写真:日経アーキテクチュア)
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米クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの「6フィート・オフィス」。半円形のステッカーでソーシャルディスタンスを明示し、感染を防止する(写真:クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド)
米クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドの「6フィート・オフィス」。半円形のステッカーでソーシャルディスタンスを明示し、感染を防止する(写真:クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド)
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ソフトバンクの本社が入居する「東京ポートシティ竹芝」で、開業に合わせて9月に開催されたイベントの様子。動線や立ち止まっていい箇所を床に表示し、間隔を保って観覧する(写真:東急不動産)
ソフトバンクの本社が入居する「東京ポートシティ竹芝」で、開業に合わせて9月に開催されたイベントの様子。動線や立ち止まっていい箇所を床に表示し、間隔を保って観覧する(写真:東急不動産)
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 新型コロナウイルスが建築界に影響を及ぼし始めたのは2月中旬ごろ。中国での感染拡大でサプライチェーンが打撃を受け、建材・設備の納期が大幅に遅れる事態に陥った。

 その後、感染は瞬く間に世界中に広がり、3月24日には東京五輪・パラリンピックを2021年夏へ1年延期する異例の事態に。政府が4月7日に緊急事態宣言を発令したことで、渋谷や新宿、丸の内といった東京の都心では人影がまばらになり、多くの建設会社は感染防止のために工事の中断に踏み切った。

 かつて、コレラなどの疫病の流行を背景として、ナポレオン3世がパリ大改造を実行に移したように、コロナ禍は現代の建築・都市の在り方にも変化を及ぼし始めた。

 最初に大きな影響を受けたのがオフィスだ。外出自粛などで在宅勤務やテレワークが急速に普及したことで、多くの企業がオフィス面積の縮小やレイアウトの変更を考え始めた。9月には、人材派遣大手のパソナグループが、本社機能を東京から兵庫県の淡路島に移転すると発表して話題を呼んだ。

 設計事務所や建設会社も例外ではない。清水建設は11月30日、首都圏近郊にサテライトオフィスを整備すると発表した。今後、社外に約700席を確保し、社内外を合わせて合計800席のテレワーク用執務スペースを確保する。21年5月からは本社のフリーアドレス化にも着手する。

 オフィスの見直しと同時に変化が現れたのが住宅だ。「職住融合」をキーワードに、住戸内に書斎を設けたり、共用部にワークスペースを確保したりした住宅商品が次々に出てきた。

 ウィズコロナあるいはアフターコロナを見据えて新たな建築や都市の在り方を探る動きは21年以降、ますます活発になるだろう。いかに建築のニューノーマル(新常態)を提示するか。建築実務者の力量が試されることになる。

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