建築生産プロセスそのものの改革を掲げる鹿島と清水建設。工事を終えた両社のパイロット現場の効果を検証するとともに、新型ロボの開発など最新の取り組みを追う。
「鹿島スマート生産ビジョン」のパイロット現場「名古屋伏見Kスクエア」が2019年9月に竣工した。18項目もの新技術やシステムを集中投入した“実験場”での実証を足掛かりに、鹿島はロボット開発に拍車をかける。
現場内でのモノと人の動きを、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデル上でリアルタイムに把握する──。
鹿島が現場適用を進める、IoT(モノのインターネット)技術を活用した資機材位置・稼働モニタリングシステム「K-Field(ケイ・フィールド)」だ〔写真1〕。導入するのは、延べ面積8万m2超となる神奈川県内の複合ビルの建設現場。建築生産プロセスを変革して生産性の向上を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」のモデル現場だ。
BIMモデルでリアルタイム表示
鹿島建築管理本部技術企画グループの武井昇次長は、「バーチャルとリアルを融合した“現場のデジタルツイン”によって、ブラックボックスだった現場の慣習や人の経験などもデータとしてあぶり出す」と、導入の狙いを語る。
ケイ・フィールドの仕組みはこうだ。建設現場の“動産”である仮設資機材、技能者や技術者に小型の発信機を、現場内の各層に受信機をそれぞれ取り付け、Wi-Fiを通じて取得したデータをクラウド上のサーバーに送る。工事事務所では、現場内のモノと人の状況を、遠隔から現場にいるかのように管理できる〔写真2〕。現場内で作業するロボットの稼働状況などもモニタリングが可能だ。
最新のモニタリングシステムで遠隔管理
パイロット現場での実証生かす
鹿島が、スマート生産ビジョンを公表したのは2018年11月。「全てのプロセスをデジタルに」、「管理の半分は遠隔で」、「作業の半分はロボットと」という3つのコンセプトを打ち出した。BIMを基軸とした先端ICT(情報通信技術)や各種ロボットの活用と現場管理手法の革新によって生産性の向上を目指している。
そのパイロット現場となったのが、19年9月に竣工した「名古屋伏見Kスクエア」(名古屋市)だった。自社開発ビルであることを生かし、ロボットや現場管理ツールなど、計18項目もの技術やシステムを集中導入し、検証した〔写真3〕。
延べ労働時間は2割強削減
冒頭のケイ・フィールドはその技術の1つ。Kスクエアでの実証を経て、神奈川県内の現場では、2次元から3次元に、また、資機材のみならず人の動きを対象とするシステムに進化させた。併せて、現場に設置したカメラの映像などによって遠隔管理するための「現場内モニタリングシステム」も、画面の切り替え機能の充実を図るなど、ブラッシュアップした。
Kスクエアの建設現場で所長を務めた鹿島の木村友昭氏は導入メリットについてこう話す。「資機材がどこにあるか、誰が使っているか分からなくて探し回る時間や、使える資機材を活用せずに遊ばせてしまうといったコストの無駄が省ける。リース品の毀損・滅失などの管理にも有効だ」。