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熟練工の減少は、日本以外の先進国でも深刻な問題だ。生産性向上へ、世界各国で建設ロボットの開発が加速している。米シリコンバレー在住の瀧口範子氏に世界の建設ロボット事情をリポートしてもらった。(日経アーキテクチュア)

 米国では建設ロボットの開発が目覚ましい。ロボットのスタートアップ企業は、既に確立しつつある自走技術が適用できる市場を求めてきた。倉庫や病院などの屋内搬送に続き、今、建設業界が有望な市場と見られるようになってきたのだ。

 スタートアップ企業が多く見られるのは、現場の作業進捗をモニタリングする分野だ。4本足で走行する犬型ロボット、ボストン・ダイナミクスの「スポット」もここを狙う。米国で試用段階にあり、サンフランシスコ国際空港で建設中の新ターミナル1では、2019年に数回にわたってスポットミニが現場を歩き回った〔写真1〕。ドイツに本拠を持つ360度画像キャプチャ技術会社、ホロビルダー(HoloBuilder)の技術を統合する。

〔写真1〕ボストン・ダイナミクスの「スポット」
〔写真1〕ボストン・ダイナミクスの「スポット」
サンフランシスコ国際空港ターミナル1現場でのテストの様子。頭上に360度カメラを搭載して、指定した各所で停止して撮影を行う。ソフトバンクが買収したボストン・ダイナミクスは、ボストンが本拠で、軍事関連のロボットを開発してきた(写真:ホロビルダー)
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 新ターミナルの建設を担う建設会社、ヘンゼル・フェルプスのプロジェクト・マネージャーであるアンドリュー・キャメロン氏は、試用に至った経緯をこう語る。「ホロビルダーの技術は数年前から使ってきた。だが、現場のエンジニアが撮影にかけられる時間は限られる。この作業が自動化できればよいのにと話していたのが18年。19年半ばには、ボストン・ダイナミクスを含めた3社で、スポットミニのテストを行っていた」。

 ホロビルダーは顧客の1社からボストン・ダイナミクスを紹介され、技術統合が実現したと語る。利用するには、アプリ「SpotWalk」に建物の地図を入れ、まずはスポットと一緒に現場を歩いて撮影箇所を指定。2回目以降はスポットがこの作業を自動化する。キャメロン氏は、建設作業が終わった夕方以降に撮影でき、これまでと同じインターフェースが使えるのは大きな魅力だとする。テストでは、2フロアにわたる100カ所のキャプチャ作業を様々な期間で試した。20年中に本格的に導入したいとするが、ボストン・ダイナミクスによる課金モデルや料金の詳細は未定という。

 足で歩行するロボットは、建設現場のように地面が平らでなく障害物も多い環境に適しているとされる。犬型ロボットを開発する会社には、スイス発のエニーボティクス(ANYbotics)もある〔写真2〕。オレゴン州のアジリティ・ロボティクス(Agility Robotics)は、2本足歩行の「ディジット(Digit)」で市場投入を狙う。安定した歩行技術が売りだ。

〔写真2〕エニーボティクスの「エニーマル」
〔写真2〕エニーボティクスの「エニーマル」
4歩足歩行するエニーマルは、もともとスイスのチューリッヒ工科大学の研究プロジェクトとして2009年に開発がスタートした。360度カメラを搭載し、充電ステーションに自動的にドッキングする(写真:エニーボティクス)
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